10月16日の日本の昔話
腰折れスズメ
むかしむかし、あるところに、心やさしいおばあさんと、よくぶかいおばあさんが、となりあわせにすんでいました。
ある朝、心やさしいおばあさんが、ほうきで庭をはいていますと、庭のすみの草むらで、チイチイと悲しそうになくスズメがいました。
「おおっ、かわいそうに」
心やさしいおばあさんが、スズメを手のひらにそっとのせますと、スズメの腰の骨が折れています。
おばあさんは、そのスズメを家へ連れてかえり、いっしょうけんめいに、かんびょうしました。
するとだんだん、スズメのキズも治ってきました。
ある日のこと、スズメが何か言いたそうにしています。
「どしたんだい? ああ、元気になったので、お家に帰りたいんだね」
おばあさんがスズメを庭先に出してやると、スズメは元気よく飛んでいってしまいました。
「あんなに元気になって。でも、あのスズメがいなくなると、なんだかさみしいね」
それから何日かたった、ある朝、いつものようにおばあさんが庭をほうきではいていますと、なにやら、なつかしい鳴き声が聞こえてきます。
「あれあれ、あんたはあのときのスズメかい? うれしいね、会いに来てくれたのかい」
スズメはうれしそうに鳴くと、おばあさんの前に小さなタネを落として、そのまま飛んでいってしまいました。
そのタネは、ひょうたんのタネです。
おばあさんはスズメにもらったひょうたんのタネを、庭にまきました。
やがて秋になり、スズメのくれたひょうたんは、りっぱに成長して、たくさんのひょうたんがみのりました。
そして、すっかり大きくなったひょうたんを取ってみると、なんだかすごく重たいのです。
おばあさんがそのひょうたんをわってみますと、あらビックリ。
中にはお米が、たくさんつまっているのです。
「あれまあ、ふしぎなこともあるものだね」
おばあさんは、そのお米でご飯をたいてみました。
そのご飯のおいしいこと。
おばあさんはそのひょうたんのお米を近所の人にくばり、あまったお米を売って、お金持ちになりました。
さあ、それをねたましく思ったのは、となりのよくぶかいおばあさんです。
よくぶかいおばあさんは、庭で遊んでいるスズメに石をぶつけてつかまえると、かわいそうに、そのスズメの腰の骨をむりやり折ってしまいました。
そして、その腰の折れたスズメをかごに入れると、そのスズメに毎日えさをやりました。
「さあ、はやく良くなって、わたしにひょうたんのタネを持ってくるんだよ」
そして一ヶ月ほどがたちました。
「もう、そろそろいいだろう」
よくぶかいおばあさんは、スズメを庭に連れ出すと、こういいました。
「いますぐ飛んでいって、米のなるひょうたんのタネを持ってくるんだよ。さもないと、おまえをひねりつぶしてしまうからね」
スズメのキズはまだ治っていませんが、こわくなったスズメは、痛いのをガマンして、そのまま飛んでいきました。
それから何日かたったある日の夕方、毎日庭先でスズメが帰ってくるのを待っている、よくぶかいおばあさんの前に、あのスズメが現れました。
「やれやれ、やっときたね」
よくぶかいおばあさんは、スズメの落としていったひょうたんのタネを拾うと、それを庭にまきました。
そのひょうたんのタネも、ドンドン大きくなって、秋にはりっぱなひょうたんがたくさん実りました。
「よしよし、これでわたしも金持ちになれる」
おばあさんが包丁を持ってきて、一番大きなひょうたんの実をわってみました。
すると、中から出てきたのははお米ではなく、毒ヘビやムカデやハチだったのです。
「ひぇーーー!」
他のひょうたんからも、毒ヘビやムカデやハチなどがたくさん出てきて、よくぶかいおばあさんにおそいかかりました。
※ よくにたお話しが、外国にもあります。 ロシアの昔話 → 大きなスイカ
おしまい
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