きょうの百物語
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4月2日の百物語

ネコの大カボチャ

ネコの大カボチャ

 むかしむかし、あるところに、年老いたネコを飼(か)っている家がありました。
 
 ある日の事、その家のおかみさんが鏡(かがみ)の前で化粧(けしょう)をしていたら、そこへネコが来て、
「まあ、きれい」
と、言いました。
「あら、おせじでもうれしいねえ。誰だい?」
 おかみさんが振り向いてみると、そこにはネコしかいません。
「しゃべったのは、お前かい? ・・・まさかね」
「はい、今日のおかみさん、本当にきれい」
「・・・!!!」
 びっくりしたおかみさんは部屋を飛び出すと、主人の部屋に駆け込みました。
「たっ、たいへんだよ! ネコが、うちのネコは、化けネコだよ!」
「そんな、馬鹿な」
「なにが馬鹿なもんか。化けネコでなくちゃ、ものを言うわけがない」
 おかみさんは、さっきの出来事を詳しく話しました。
 話を聞いているうちに、主人もだんだん恐ろしくなってきました。
「確かにそれは、化けネコだな」
「今のうちになんとかしなくちゃ、お前さんもわたしも食い殺されてしまうよ」
「そうだな。かわいそうだが、殺してしまおう」
 主人は庭(にわ)で寝ていたネコを、いきなり棒(ぼう)で殴り殺し、その死がいを裏の畑に埋めました。
「迷わず、成仏(じょうぶつ)してくれよ。なまんだぶ、なまんだぶ」
 それから一年間は、何事もなく過ぎました。

 その次の年、ネコを埋めたところに、大きなカボチャがなりました。
 これまでに見た事もない大きなカボチャで、見るからにおいしそうです。
「これも、化けネコを退治(たいじ)したおかげだな」
 主人は大喜びでカボチャを取り入れると、家族みんなで食べました。
 ところがカボチャを食べたとたん、みんなは苦しみ出して、まるでネコの様なうなり声をあげます。
 驚いた近所の人たちが家族を医者を連れて行きましたが、どんな薬を飲ませても、さっぱり効き目がありません。
「カボチャを食べたぐらいで、こんな事になるとは・・・」
 医者も、不思議そうに首を傾げます。
「これはもしかすると、医者よりも占い師の出番かもしれないな」
 そこで占い師を呼んで来ると、占い師が寝ている主人に尋ねました。
「これは、何かのたたりに違いない。ご主人、近頃、生き物を殺した覚えはないか?」
 主人が、真っ青な顔で苦しそうに言いました。
「実は一年前、ネコを殺して畑に埋めました」
「原因はそれだ! ネコがうらんで、たたりのカボチャを食わせたのだ。畑のカボチャを掘り返してみよ」
 占い師に言われて近所の人たちが畑を掘り返してみると、地面の中からネコのガイコツが出て来て、そのネコの口からカボチャの茎(くき)が出ていたのです。
「占い師の言った通りだ」
 近所の人たちがネコの墓をつくり、ねんごろにほうむってやりました。
 すると不思議な事に、カボチャを食べて苦しんでいた人たちの病気がうその様に治ってしまったのです。

 それ以来、主人とおかみさんは、たとえノラネコであっても、家にやって来るネコを大事にあつかったそうです。

おしまい

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