4月7日の百物語
白ヘビのたたり
千葉県の民話
むかしむかし、ある小さな里に、長さが一メートルほどの白いヘビが二匹一緒に出て来ました。
二匹の白いヘビはおとなしく、人に悪さをする様な事はありません。
二匹は、いつも仲良く一緒でした。
「このヘビたちは、とても仲が良い」
「白ヘビは、神さまの使いだというぞ。
それが一度に、二匹も現れたんじゃ。
この里に、何か良い事があるかもしれんな」
里の人たちは、白ヘビたちをほほえましく見守っていました。
ところがこの里には、八郎次(はちろうじ)というならず者がいました。
自分には何も怖い物はないと、いつも強がりを言っています。
八郎次は白ヘビの話を耳にすると、みんなの見ている前で二匹の白ヘビを叩き殺してしまったのです。
「ヘビが、何をしたというんじゃ! 何もせんのに、殺す事はなかろう!」
お百姓(ひゃくしょう)の一人が文句を言うと、八郎次は死んだ白ヘビにつばを吐きかけて言いました。
「ふん!
殺すのは、おれの勝手だろう。
第一、目玉の赤い白ヘビなど、気持ち悪くてしょうがねえ」
「白ヘビはな、神さまの使いだぞ。たたりがあったら、どうする!」
「何がたたりじゃ。そんな物、ちっとも怖くない」
八郎次は、そのまま家に帰って行きました。
その夜の事です。
八郎次の顔が、まるで皮をむいたトウガン(→ウリの一種)の様に、まっ白にふくれあがってしまったのです。
顔ばかりではありません。
手も足も、体中が白くふくれあがり、全身に激しい痛みが襲ったのです。
耐え切れなくなった八郎次は、家から飛び出すと、
「痛え! 痛えよう! 助けてくれー!」
と、叫びながら、里中を走り回りました。
そして三日三晩苦しみ抜いて、やぶの中で死んだそうです。
おしまい