2月20日の小話
話半分
京都へあきないにいく江戸の男に、もの知りの男が注意をしました。
「京へあきないにいくそうだが、ゆだんするなよ。京では、何でも値切ったほうがよい。二両といえば、一両だとおもえ」
「おお、なるほど。では、そのとおりにしよう」
男は、よろこんで出かけてゆきました。
さて、京都につくと、やっぱりおしえられたとおり、何でも、とんでもなく高い値段です。
「なるほど、いわれたとおり、おそろしいところだ。これはみな、半分ずつにきいておけばよい」
と、男は、おもいこみました。
そのうちに、ふとしたことから、京都の友だちができました。
「おまえさんの名前は、なんともうす」
江戸の男がきくと、京の男は、
「六兵衛(ろくべえ)といいまする」
(さてさて、京の人は、かけ値するから、これはさしづめ、三兵衛だろう)
「おうちは、どのぐらいの広さでございます?」
「五間(一間は、1.8メートル)の間口(まぐち→家の正面の長さ)の家でございます」
(よしよし、これも二間半の間口の家だな)
「して、なん人でくらですかな?」
「ただいまは、わたしひとりでございます」
(よしよし、これも半分)
と、江戸の男は、京の男をじろじろながめまわし。
(はて、半分には、どうしてもみえぬが)
江戸の男は、思わず首をかしげ、
「して、もう半分は、どなたでございます」
おしまい
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