11月23日の小話
風穴
男が、酒だるをかたむけて、中のお酒を出そうとしておりました。
ところが、おもうように酒が出てこないので、こまっています。
見ていた人が、
「バカなお人だ。風穴といってな、もう一つ、よぶんにあなをあけなければ、出てくるわけがない」
と、おしえてやりました。
そこで、いわれたとおりに、もう一つあなをあけると、ドク、ドク、ドクと、ちょうしよく、中のお酒が流れ出てきました。
すると男が、急に酒だるにしがみついて、大声あげて泣きだしました。
「これこれ、どうなさった? なんで泣くのだ?」
そばにいた人たちが、おどろいて声をかけますと、男は涙をふきながら、
「去年の秋のことでございます。親父どのが、小便が出なくなりまして、それがもとで死んでしまいましたが、その時に、このやり方を知っておりましたら、親父どのの頭に、大きなあなをあけてやったものを」
と、いうと、また、くやしそうに大声あげて泣きだしました。
おしまい
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