2月5日の日本民話
十二支の動物とタヌキの戦い
奈良県の民話
むかしむかし、十五夜の月の美しい、ある夜の事です。
ネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、ニワトリ、イヌ、イノシシの十二支にえらばれた動物たちが、草原に集まって十五夜の月をめでる歌あわせの会をしました。
そこヘシカがやってきて、歌あわせの審判(しんぱん)をすることになりました。
どの動物たちの歌もお月さまの美しさをうたっていて、とても見事なできばえです。
シカの審判も公平で、不満をいうものはいませんでした。
歌あわせがおわると、十二支の動物たちは一品ずつ持ちよってきた料理で宴会(えんかい)をひらいて、シカをねぎらいました。
それから何日かあとに、また歌あわせの会がもよおされることになりました。
すると審判に、タヌキが名のり出てきました。
タヌキはシカのようにごちそうが食べられると思って、名のり出たのですが、ちゃんと審判せずに口から出まかせばかりいうので、すぐに追いだされてしまいました。
ごちそうにありつけなかったタヌキは、くやしくてたまりません。
そこでキツネ、クマ、オオカミなど、十二支に入っていない動物たちを味方につけて、十二支の動物たちをやっつけることにしました。
ところがこの作戦が、十二支の動物たちにもれてしまったのです。
十二支の動物たちは、
「それならこちらから、タヌキ軍団のこもる古いお城へのりこもう」
と、相談がまとまりました。
ふいをつかれたタヌキ軍団は、城内になだれこんでくる十二支軍団にビックリ。
十二支軍団の先頭をきって、ネズミ隊が城の中へ走りこんでいくと、タヌキ軍団のネコ隊がとびだしてきて追いたてました。
ネズミ隊が逃げてくるとイヌ隊がでていって、こんどはネコ隊が城の中へ逃げこんでいきました。
合戦は五分五分でしたが、あまり信用のないタヌキ軍団からは、うらぎり者が次々にでて、ついには大将のタヌキも城から逃げだしてしまいました。
けれども、タヌキはあきらめることをしません。
今度はテングを仲間にして、十二支軍団にひとあわふかせようとしましたが、十二支軍団の竜が大あばれをしたので、テングは長い鼻をへしおられて逃げてしまいました。
戦いにやぶれたタヌキは、
「こうなったら、さいごの手だ」
と、オニに化けましたが、十二支軍団の陣地(じんち)に近づいていくと、鼻のよくきくイヌに正体をかぎわけられてしまったのです。
はげしくほえたてられ、かみつかれそうになって、タヌキはあたふたと逃げていったという事です。
おしまい
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