6月30日の日本民話
雨乞い
三重県の民話
むかしむかし、ある村での事です。
無事に田植えを終えたお百姓さんたちは、ほっとしながら天気の良い空を見上げました。
「やれやれ、田植えがようやく終わったわ。これで、今年も豊作じゃろう」
この村ではとてもよく雨が降り、近くには三つも池があるので、どの田んぼもいつも大豊作でした。
しかしどうした事か、今年は雨が全く降らず、田んぼは地割れがして、せっかく植えた苗が枯れはじめてきました。
「困ったのう。こんな事は、初めてじゃ。もうそろそろ、雨が降ってほしいが」
しかし日照りはいつまでも続き、三つあった池も底が見えてきました。
「このままでは、大変なことになるぞ。死人が出るかもしれん」
「せめて年貢(ねんぐ)が、少しでも少なくなってくれれば」
村人たちがそんな事を相談していると、何と反対に年貢米を増やすようにとおふれが出たのです。
藩の財政が苦しくなってきたので、力の弱い農民にしわよせが来たのです。
日照り続きで自分たちの食べるお米もとれないのに、年貢米を増やされてはどうしようもありません。
そこで村人たちは年貢を減らしてもらえるように、代官へ訴えました。
「お代官さま、お願いでございます。どうか年貢を、減らしてもらえないでしょうか?
お代官さまも知っての通り、このところ雨が一滴も降らず、苗が枯れ始めて来ました。
このままでは年貢どころか、一粒の米もとれません。
どうか、どうか年貢をお減らしください」
村人たちは深々と頭を下げましたが、でも代官は首を横に振ります。
「ならぬ。年貢は申しつけた通りだ」
「しかし、雨が降らなければ米は一粒も」
「では、雨が降るように雨ごいをしろ」
「雨ごい?」
村人たちは初めて聞く言葉に、みんな首をかしげました。
「あの、お代官さま。雨ごいとは、何でございましょうか?」
この村では日照りに困った事がなかったので、みんな雨ごいを知らなかったのです。
「なんだ?
お前たちは、雨ごいを知らぬのか?
雨ごいとは、雨が降るように神さまにお願いすることだ。
ほかの村では、雨が降らなくなると雨ごいをしているぞ」
「はあ」
それを聞いた村人たちは、さっそく村の神社へ行って雨ごいをしました。
これでもし雨が降らなければ、村人みんなは飢え死にです。
村人たちは鐘や太鼓をならして、何度も何度もお願いしました。
「神さま、雨を降らせて下さい。雨を降らせて下さい」
すると祈りが天に通じたのか、やがて黒雲が出てきて、念願の雨が降ってきたのです。
「よかった、よかった」
「これでおれたちは、死ななくてもすむぞ」
みんなは雨の降るなら、抱き合って喜びました。
それからは村人たちは雨が降らなくなると、神社へ集まって雨ごいをしたそうです。
おしまい
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