12月18日の日本民話
子うみ石
山形県の民話
むかしむかし、ある村の道ばたに、どうやっても動かせない大きな石がありました。
いつの頃からか夜になると、その大きな石が化けて出るというので、誰ともなくこの石を《化け石》と呼ぶようになり、誰も夜はその道を通らなくなりました。
でもある時、となり村まで用足しに行った庄屋(しょうや)さんが、村へ帰るのにどうしても化け石の一本道を通らなければならなくなりました。
「うむ。こわいが仕方がない」
と、庄屋さんがこわごわ通り抜けようとすると、
「お願いします。助けて下さい」
「お願いします。助けて下さい」
と、うしろから女の人の声が聞こえるのです。
「ひぇー! だっ、誰だ?」
庄屋さんがビックリしてふりかえると、あの化け石が女の声で、
「私は、化け石と呼ばれる女石(おんないし)です。私にはまもなく子どもが産まれますが、腹がすいて困ってます。何か食べるものをめぐんで下さい」
と、いったのです。
「おおっ、そうか。少し待っていろ」
かわいそうに思った庄屋さんは、急いで家に帰ってごはんをたき、にぎりめしをたくさん作って化け石のそばに持っていきました。
すると化け石から手が出てきて、にぎりめしをたちまち食べてしまったのです。
やがておなかがいっぱいになった化け石は、おにぎりぐらいの石を取り出して、
「お礼にお持ち下さい。この石はあなたの家をいつまでもはんじょうさせる子産石(こうみいし)です」
と、いうと、黒々としたふつうの石にもどりました。
庄屋さんの家は、それからいつまでも栄えました。
そしてまつっておいた子産石が、本当に子石(こいし)を産む事があったという事です。
おしまい
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