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2009年 6月1日の新作昔話
二宮金次郎(尊徳)
神奈川県の偉人
今でも多くの小学校に銅像のある二宮金次郎は、貧しい農家に生まれながらも学問に励み、出世して藩の財政を立て直したり、田畑の開墾を指導して、六百余りの村を復興させた人物です。
これは、この二宮金次郎の少年時代のお話しです。
相模国(さがみのくに→神奈川県)に生まれた金次郎は、とても貧しい農家の長男でした。
とても貧しかったので、その日に食べる物もありません。
そこで仕方なく、末の弟を親戚の家に出す事になったのです。
その夜、お母さんは息子の金次郎に泣きつきました。
「金次郎。わたしはやっぱり嫌だよ、あの子を親戚にやるなんて」
それを聞いた金次郎は、お母さんに言いました。
「わかりました。明日からは、わたしが人の二倍働きます。だから弟は、すぐに帰してもらいましょうね」
「ああ、金次郎。すまないねえ」
金次郎は弟が帰ってくると、前よりもっと働かなければなりませんでした。
朝早くからたきぎを拾って町で売り、それが終わると夕方まで畑をたがやして、そして夜は遅くまでわらじをつくりました。
お母さんは体が弱くて、あまり働けないので、十五才の金次郎が一人で家族をやしなうのです。
それは大変な苦労でしたが、金次郎は文句ひとついいません。
それどころか、
「移動する時間、何もしないのはもったいないな。時間は、上手につかわなくちゃ」
と、たきぎを町へ売りに行く時は、好きな本を大声で読みながら歩いたのです。
この当時、農家の人間が勉強するのは珍しい事でした。
ですから、この金次郎のおかしな行動は、すぐに村中に広まりました。
「あの子、勉強しながら歩いているよ」
「ほんと、全く変わった子だね」
そしてそれを知った親戚のおじさんは、金次郎をしかりつけました。
「馬鹿者! 農家の人間に、学問などいらんのだ! だいたい、本を買う金があったら、家族に食べ物でも買ってやれ!」
しかし金次郎は、おじさんにしかられても、こっそり勉強を続けました。
こうして勉強を続けた金次郎は、やがてどんどん出世をして、村一番のお金持ちになったのです。
おしまい
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