2009年 9月25日の新作昔話
福済寺(ふくさいじ)の地蔵尊(じぞうそん)
長崎県の民話
むかしむかし、長崎の町に、とてもひどい流行病が広まりました。
それにかかると高熱が何日も続いて、体中に紫の斑点が出来、そして苦しみながら死んでいくのです。
おそろしい事に、この病は病人から家族へ、家族から近所の人へ、近所の人から町中へと、どんどん広がっていくのです。
そんなわけで、毎日あちこちの家で葬式がありました。
ある晩の事、町に住む太一(たいち)という男が、不思議な夢を見ました。
一体のお地蔵さまが、太一の枕元に立ち、
「わしは浦上川(うらがみがわ)に捨てられておる石地蔵じゃ。今まで長い間、誰もわしを拾ってくれる者はおらんかった。もしお前がわしを拾ってくれて、まつってくれるなら、町の病をなくしてやろう」
と、言ったのです。
次の日、太一は不思議に思いながらも浦上川へ行ってみました。
「本当に、あるのかな?」
川に入ってあたりを探してみると、岸近くの草むらの中に、夢枕に立った石のお地蔵さまが捨てられているではありませんか。
「これだ!」
太一は、さっそくお地蔵さまを家に持って帰ると、ていねいにおまつりしました。
するとそれからというもの、日ごとに町の流行病は消えていったのです。
町の人々も太一も、ひと安心しました。
しかしそうなってくると、太一も次第に、お地蔵さまのおまつりをしなくなってきたのです。
するとまた、病気になる人が出てきました。
「これは、きちんとしたお寺にまつった方がいいだろう」
こうして、お地蔵さまは近くの福済寺(ふくさいじ)というお寺に安置され、それ以来、流行病はうそのようになくなったのでした。
こんなことがあってから、人々はこのお地蔵さまの御利益(ごりやく)に感謝して、毎年四月二十四日には、盛大なお祭りをするようになったのです。
おしまい
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