2010年 7月16日の新作昔話
百物語の代金
新潟県の民話
むかしむかし、あるお寺に若者たちが集まって、化け物が現れると言われる百物語をしました。
一人一人順々に怖い話を語っていき、最後の百話目を語り終えた若者が、最後の百本目のロウソクをフッと消したその時、突然、ガタンと天井板がはずれて、ドタンと大きな棺が落ちてきたのです。
「うぎゃー!」
「でっ、出たー!」
若者たちは大騒ぎしましたが、でも、ただ棺が落ちてきただけで、ほかに何も起こりません。
やがて、気を取り直した若者の一人が言いました。
「おい、この棺、誰か開けてみろや」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
誰も棺を開けようとしないので、仕方なく言い出した若者が棺を開けてみました。
すると中には、なんともおいしそうなボタモチがいっぱい入っていたのです。
これには若者たちも喜んで、そのボタモチをみんなで全部食べてしまいました。
さて次の晩、昨日の若者たちは、またボタモチを食べたいと思い、お寺に集まって再び百物語を始めました。
そして百本目のロウソクの火が消されたそのとき、昨日と同じように天井板がガタンとはずれて、何かがドタンと落ちてきました。
若者たちは喜んで集まったのですが、何と落ちてきたのは真っ白なひげのおじいさんで、手にはそろばんと大福帳(だいふくちょう)を持って立っていたのです。
おじいさんはニッコリ笑うと、大福帳をパラパラとめくり、そろばんをパチパチとはじいて若者たちに言いました。
「お前たち、一人ずつ百文ずつ払ってもらおう」
「???」
「???」
それを聞いた若者たちが不思議な顔をしていると、おじいさんは続けて言いました。
「お前たちは、昨日、棺に入ったボタモチを食べたであろう。今日はその勘定(かんじょう)をもらいにきたんだ」
百物語で出てくる化け物の中には、こんな変わった化け物もいたということです。
おしまい
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