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2010年 7月26日の新作昔話

狩りをやめた殿さま

狩りをやめた殿さま
千葉県の民話

 むかしむかし、阿蘇村の村上にあるお城の殿さまは、狩りがとても大好きで、いつも犬を連れて山の中を歩き回っていました。
 そして自慢の弓矢で、ウサギや山鳥やキツネやシカなどを射止めていたのです。
 さて、ある日の事。
 今日はいつもと違って獲物が捕れず、殿さまがイライラしていると、池でオシドリの夫婦が仲良く泳いでいたのです。
 いつもなら、こんな水鳥には目もくれないのですが、その日は獲物が一匹も捕れていないことから、
「仕方ない、今日はこれで我慢するか」
と、弓に矢をつがえると、ヒューッと放ちました。
 するとその矢は見事に、オスのオシドリの首を貫いたのです。
 でも、こんな水鳥を持って帰っても仕方がないので、殿さまは射止めたオシドリをそのままにして帰って行ったのでした。
 その夜、殿さまが眠っていると、殿さまの枕元で人の気配がしました。
 殿さまが目を開けると、色の白いほっそりした女が座っていて、
「食べる為ならともかく、遊びで殺生はおやめくだされ。私の亭主をお返しくだされ」
と、泣きながら言うのです。
 殿さまは、ガバッと飛び起きると刀を手に取り、
「このくせ者!」
と、刀を抜きましたが、その瞬間、女の姿は消えてしまいました。
 ただ、女の座っていた所がぐっしょりと濡れていて、オシドリの羽が一枚落ちていました。
 気味悪くなった殿さまは、朝になると昨日の池に行って、まだ池にいたもう一羽のメスのオシドリも一矢で射ってしまいました。
 そして引き上げてみると、そのメスのオシドリは羽の中にオスのオシドリの首をしっかりと抱きかかえていたのです。
「そうか、昨日の女は、わしが殺したオスのオシドリの妻であったのか。・・・確かに、遊びで殺生をするのは良くない事だ」
 殿さまはその場で自慢の弓矢をへし折ると、二度と狩りはしなかったそうです。
 そしてこの話しを聞いた村人たちは、オシドリの夫婦をとても哀れに思い、池のほとりに弁天さまをまつったそうです。

おしまい

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