2011年 7月15日の新作昔話
因果の小車(いんがのおぐるま)
山口県の民話
むかしから、悪い事や良い事をすれば、その行いは車輪がぐるりと回るように一周して、自分のところに帰ってくると言われています。
これを、 『因果の小車(いんがのおぐるま)』と言います。
むかしむかし、あるところに、一人の腕の良い猟師がいました。
ある日の事、猟師がキジを捕りに山へ出かけると、少し向こうの地面から一匹のミミズが出て来ました。
(ミミズか)
猟師がミミズを見ていると、どこからかカエルがやって来て、そのミミズをパクリと食べてしまいました。
(カエルが、ミミズを食べたか)
そしてそのカエルを見ていたら、今度はヘビが出てきて、そのカエルをパクリと食べたのです。
(今度は、ヘビがカエルを食べたか)
そしてカエルを食べたヘビが満足そうにしていると、突然、空からキジが飛んできて、そのヘビを鋭いくちばしで突き殺し、その場でおいしそうに食べたのです。
(今度は、キジがヘビを食べたか。・・・キジ!)
猟師は、はっと気づきました。
(おれは、何をしているんだ。せっかくキジが出てきたのに、見とれているなんて)
猟師は鉄砲をかまえると、ヘビを食べてお腹が大きくなったキジに狙いを付けました。
そして引き金に指をかけると、ふと、こんな事を考えました。
(ミミズのやつは、カエルに食べられた。
カエルのやつは、ヘビに食べられた。
ヘビのやつは、キジに食べられた。
そしてキジのやつは、おれに殺される。
そうすると、次はどうなるのだ?)
そう考えると、だんだん怖くなってしまい、引き金を引く指に力が入りませんでした。
そこで猟師は鉄砲をしまうと、そのまま山を下りていきました。
するとその猟師の背後から、不気味な声がかかりました。
「猟師よ、命拾いをしたな」
猟師がびっくりして後ろを振り返ると、木々の暗闇の向こうに大きな二つの目玉が金色に光っていたのです。
「うひゃー! 化け物だー!」
猟師は鉄砲を放り投げると、一目散に逃げていきました。
おしまい
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