2011年 11月7日の新作昔話
ネコの宮
山形県の民話
むかしむかし、ある大きな家に、一匹のネコが迷い込んできました。
それを見つけた旦那は、
「汚いネコだな。こんなのがいては、家が汚れる」
と、言って追い出そうとしたのですが、ネコ好きなおかみさんが、
「だけど、せっかく我が家に来たのだから、家で飼ってやりましょうよ。この子の面倒は、あたしがみるからさ」
と、言って、飼う事にしたのです。
さて、それからそのネコはおかみさんにとてもなついて、いつも家の中をついて回ります。
ご飯を食べる時も、お風呂に入る時も、寝る時も、ネコはいつもおかみさんにべったりです。
そしておかみさんが便所に行っている間も、ちょこんと便所の前に座って待っているのを見て、腹の立った旦那は、
「このドラネコめ!」
と、手に持った刀でネコの首をスパーンと切り飛ばしたのです。
するとネコの首は便所の屋根裏まで飛んでいき、そこでガタガタと暴れ出しました。
びっくりしたおかみさんが、あわてて便所から飛び出すと、ネコの首と一緒に何かがどさっと落ちてきました。
見るとそれは猛毒を持ったマムシで、便所に入ったおかみさんに噛みつこうとしていたのを、飛んでいったネコの首が噛み殺したのです。
「そうか、お前は妻を守っていたのか。それなのにおれは・・・」
ネコがずっとおかみさんを守っていた事を知った旦那は、ネコに涙を流して謝ると、ネコのために立派なお宮を作ってやったということです。
おしまい
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