2012年 2月3日の新作昔話
節分の由来
福岡県の民話
むかしむかし、殿さまの使いで他の国へ行く途中の男が、門司(もじ→福岡県北九州市)の鹿喰峠(しじばみとうげ)と呼ばれる峠(とうげ)の大きな岩の上に座ってたばこを一服していると、突然鬼が現れて言いました。
「これは、なかなかにうまそうな人間だ。悪いが昼飯に、お前を食べさせてもらうぞ」
男は怖くて腰が抜けてしまい、逃げる事が出来ません。
でも男は、勇気を出して言いました。
「たっ、食べると言うのなら仕方がないが、この世の最後に頼みを聞いてくれ」
「いいだろう。何だ、頼みとは?」
「鬼というものは、自分の大きさを自由に変えられると聞く。食べられる前に、何かでっかい物に化けるところを見せてくれ」
すると鬼はニヤリと笑って、ゴーーーッ! と、大きく息を吸い込むと、山よりも大きな体になりました。
「どうだ、これで満足か?」
「ああ、さすがは鬼だ。・・・でも、さすがの鬼でも小さくなるのは無理だろう」
男がそう言うと鬼は、ピューーーッ! と、大きく息を吐いて、どんどん小さくなりました。
そしてついに、豆粒ほども小さくなりました。
「どうだ、これで満足か?」
「ああ、満足だ!」
男はそう言うと、その小さくなった鬼をつまんで、パクリと飲み込んでしまいました。
「やったー! 鬼を退治したぞー! ・・・おや? 腹が、腹が痛い」
飲み込んだ鬼がお腹の中で暴れ出したので、男は血相を変えて玉泉寺(ぎょくせんじ)と言うお寺に駆け込むと、和尚さんに助けを求めました。
「和尚さま、助けて下さい! 小さくなった鬼を飲み込んだのですが、鬼が暴れるので腹が痛くてたまりません」
すると和尚さんは、小僧にいった大豆を用意させると、
「鬼は外!」
と、叫びながら、そのいった大豆を男に食べさせました。
すると男のお腹が、どんどんどんどんふくらんできて、
ブーーーーッ!
と、大きなおならが出たのです。
そしてそのおならと一緒に小さくなった鬼も飛び出したのですが、おならのあまりの臭さに鬼はそのまま死んでしまいました。
和尚さんの話によると、鬼の正体はお寺の境内(けいだい)にあるクヌギの精が化けたものだそうです。
そして鬼を追い出したこの豆まきが、節分の由来だとも言われています。
おしまい