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2012年 12月17日の新作昔話

馬の卵

馬の卵
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 むかしむかし、インドに仏さまの教えを広める、偉い先生がいました。
 その先生には五人の弟子がいるのですが、ある日の事、弟子たちがいつもの様に先生の事を話していました。
「先生は、インドで一番偉い先生だ。その弟子になれて、おれたちは幸せ者だ」
「そうだな。しかしおれたちは、その先生に何の恩返しもしていないな」
「どうだろう、みんなでお金を出しあって、馬を一頭、買って差し上げる事にしたら」
「それはいい。先生は一日中歩き回って、とても疲れていらっしゃるからな」
 そこで二人の弟子が、馬を買いに出かけました。
 そして途中の大きな木の下で腰を下ろして休憩していると、大きな袋を持った男がやって来て言いました。
「お坊さまたち、どこへ行かれるのですか?」
「はい、先生の馬を買いに行く途中です」
「ほほう、馬をね」
 この男は、スイカ売りでした。
 男は人の良さそう二人の弟子を見て、ひとつ、だましてやろうと思いました。
「これはちょうどいい。実は、わたしは馬売りなんですよ。でも、今は馬が高くて売れないので、馬のタマゴを売り歩いているのです」
 それを聞いた二人は弟子は、びっくりです。
「馬のタマゴだって?」
「馬は、タマゴで生まれるのですか?」
「もちろんです。中には母親のお腹から生まれる馬もいますが、多くの馬はタマゴから生まれるのです」
  スイカ売りは、袋からスイカを取り出して二人に見せました。
「ごらんなさい。これが馬のタマゴです。馬はタマゴから育てるととても人になつくので、最近はみんな馬をタマゴから育てていますよ」
「そうなんだ。でも、われたちのお金で買えるだろうか?」
「買えますとも。あなた方の為に、特別大きなタマゴを売ってさしあげましょう」
 二人の弟子はお金を支払うと、大喜びでスイカを持って帰りました。
 そしてさっそく先生に見せると、
「これが馬のタマゴか、すばらしい!」
と、スイカを見た事がない先生は、うれしそうに言いました。
「では、大事に育てる事にしよう。しかし、今日は隣村に行くので、めんどうだが、あとから持って来てくれないか」
「はい、かしこまりました」
 そこで弟子たちは、スイカをかかえて先生のあとから歩いていきました。
 ところが一人の弟子が、木の切り株に足をつまずき、うっかりスイカを落としてしまったのです。
 するとスイカはコロコロ転がって行き、大きな木の根元にぶつかって割れてしまいました。
 そしてその時、木の根元で昼寝をしていたウサギがびっくりして、ピョンピョンとすごい早さでどこかへ行ってしまいました。
「大変だ! タマゴが割れて、中にいた馬の赤ん坊が逃げてしまったぞ!」
 弟子たちは、青くなって先生のところに走っていきました。
「申し訳ございません。あのタマゴが割れて、先生の子馬が逃げてしまいました。ピョンピョンと風の様に足の早い馬だったのに、残念です」
 すると先生は、笑って言いました。
「気にする事はない。そんなに早く走る馬では、年寄りのわたしが乗っても振り落とされるだけだ。これはきっと、その馬に乗らない方が良いと、仏さまが教えて下さっているに違いない」

おしまい

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