2013年 4月29日の新作昔話
カッパ石(かっぱいし)
長崎県の民話
むかしむかし、長崎県の中島川はとてもきれいな川で、多くのカッパが住んでいました。
しかし人家が増えると川の水が汚れ、それに腹を立てたカッパ達が人間に悪さをするようになったのです。
そこで中島川の上流にある水神社では、これ以上、川を汚さないように役所へ願い出るとともに、毎年五月の吉日にカッパ達を招待して、カッパ達に一晩中ご馳走を振る舞うようになったのです。
近くの村人達はカッパを見ようと水神社にやってきますが、しかし拝殿は閉め切ったままなので中の様子は神主さん以外は誰も知らず、外からは決して見る事は出来なかったのです。
それでもカッパのガヤガヤ騒ぐ奇妙な声と食器の音だけは、一晩中外にも聞こえてくるのです。
さて、カッパの大好物の一つに、タケノコの輪切りがあります。
そこでカッパの皿には、大きくなりすぎて固くなったタケノコが山のように盛られていました。
一方、神主さんの皿には、若くて柔らかいタケノコが盛られてあります。
「さあ、さあ、カッパどもよ。遠慮はいらんぞ。腹いっぱい食べてくれ」
それを聞いたカッパは大好物のタケノコにかぶりつきますが、とても固くてなかなか噛み切れません。
(うーん、なんて固いタケノコじゃ)
でも神主さんは、タケノコを美味しそうにポリポリと食べています
(人間の歯は、丈夫なものじゃ)
(あんな丈夫な歯に噛みつかれたら大変だ)
カッパ達は口々に、そう言いました。
そんなわけでこの川に住むカッパは、人間に悪さをしなくなったのです。
おしまい
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