きょうの新作昔話
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2013年 6月17日の新作昔話

西の滝の竜 弘法話

かめに閉じ込められた竜 弘法話
香川県・小豆郡の民話

 むかしむかし、ある山に二匹の竜が住み着いて、毎日毎日、村に降りてきては田畑を荒らしていました。

 そんなある日、旅の途中の弘法大師が荒れ果てた田畑を見て村人にわけを尋ねました。
「はい、これは山に住む二匹の竜の仕業です。
 わしらがいくら苗を植えても竜が荒らしてしまうので、もうどうする事も出来ないのです」
 村人たちは涙を流しながら、そう答えたました。
「そうですが、それではわたしがその竜を退治しましょう」
 大師の言葉に、村人はびっくりです。
「あの竜は、とても人間の勝てる相手では」
「大丈夫。だが危ないので、あなたがたはここにいるように」
 大師はそう言うと、村人たちが止めるのを聞かず山を登って行きました。

 翌朝、心配した村人たちが、村はずれに集まりました。
「あのお坊さま、竜に食われてしまったんじゃろうか?」
「かもしれんな。いくらお坊さまでも、人間の力で竜に勝つなど」
 そこへ両手に大きなかめをかかえた大師が山から帰ってきました。
「おお、みんな集まっておったか。さあ、もうこれで大丈夫だ。山にいた竜を、このかめに封じてきたぞ」
 大師の言葉にびっくりした村人たちがかめの中を見てみると、たしかにかめの中には蛇の様に小さくなった二匹の竜が閉じ込められているではありませんか。
 大師は崖に穴を掘ると、その中に竜を閉じ込めたかめを入れました。
 するとかめの中から、二匹の竜の声が聞こえてきます。
「お坊さま、どうか許して下さい。
 もう決して、悪い事はいたしません。
 もしここから出して頂ければ、これからずっと村が水不足にならないようにしますから」
「・・・そうか。では、約束を守れよ」
 大師がそう言ってかめのふたを取ってやると、二匹の竜はかめから飛び出して、うれしそうに空高く飛び去って行きました。

 その後、不思議な事に竜を閉じ込めていたかめの底から止めどもなく水が湧き出たそうです。

おしまい

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