5月23日の世界の昔話
イラスト 「荒駒るみ」
キツネとガチョウ
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むかしむかし、あるキツネが草原ヘやって来ました。
草原には、
よく太ったガチョウのむれが座っていました。
するとキツネは、笑いながら言いました。
「これはついているぞ。
これだけいれば、当分食べ物に困ることはない」
キツネに気づいたガチョウのむれは、
あわれっぽく命ごいをはじめました。
でもキツネは、少しも聞き入れようとはしません。
「命ごいをしてもむださ。
お前たちは、みんな死ぬ事に決まってるんだ」
すると一羽のガチョウが、勇気を出して言いました。
「わたしたちあわれな鳥どもが、この若い元気いっぱいの命をどうしても捨てなければならないのでしたら、どうかその前に、わたしたちがおいのりをする事をお許しください。
みんなが罪のあるままで、死にませんように。
それさえすみましたら、わたしたちはあなたの前に一列にならびましょう」
「よかろう」
と、キツネは言いました。
「それは、もっともな事だ。
さあ、いのるがいい。
ぼくはその間、待ってやろう」
まず最初の一羽が、ひどく長いいのりを始めました。
ガア、ガア、ガア、ガア・・・。
最初の一羽がなかなか終わらないので、二番目は待ち切れずに、
ガア、ガア、ガア、ガア・・・。
と、始めました。
それから三番目、四番目と、
それにならいました。
こうしてしまいには、みんなが一緒になって、
ガア、ガア、ガア、ガア・・・。
と、鳴きました。
そして今でも、
ガア、ガア、ガア、ガア・・・。
と、鳴いているのです。
おしまい
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