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12月11日の世界の昔話

ジョヴァンニーノのおかしなおじさん

ジョヴァンニーノのおかしなおじさん
イタリアの民話イタリアの情報

 むかしむかし、ジョヴァンニーノという若者には、ちょっと変わり者のおじさんがいました。
 ある日の事、そのおじさんがジョヴァンニーノの所にやってきて、
「人手が足りないから、しばらくの間、手伝いに来てくれないか?」
と、言ったのです。
「ああ、いいですよ」
 おじさんはお金持ちだったので、いい小遣い稼ぎになるだろうと、気軽に引き受けたジョヴァンニーノは、次の朝、おじさんの家に行きました。
「やあ、良く来たな。・・・さて、色々と仕事はあるんだが、まずはその前に覚えてもらいたい事がある。お前はこれを、何と呼ぶかね?」
 そう言っておじさんが指をさしたのは、この家で飼っているネコでした。
「何って、ネコですよ」
「そうだ。確かにネコと呼ばれる生き物だ。でもこの家では、『ネズミネライ(ネズミ狙い)』と、呼ばなくてはならん。いいかね」
「・・・はい。ネコではなく、ネズミネライですね」
 次におじさんは、自分がはいている木靴を指さしました。
「それではこれは、何と呼ぶかね?」
「それは、木靴ですよ」
「そう、木靴だ。だがこの家では、『パタパタ、ドンドン』と呼ばなくてはならん。いいかね」
「はい、木靴ではなく、パタパタ、ドンドンですね」
 次におじさんは、ジョヴァンニーノを居間に連れて行って、暖炉でメラメラと燃えている火を指さしました。
「これは、何と呼ぶかね?」
「火ですよ、おじさん」
「いいや。この家では、これは『愉快、愉快』だ」
「はい、愉快、愉快ですね」
 次におじさんは、台所のすみの手おけの中を指さしました。
「この液体は、何と呼ぶかね?」
「水ですよ、おじさん」
「いやいや、この家では、『たっぷり、ちゃぷん』だ」
「はい、たっぷり、ちゃぷんですね」
 次におじさんは、ジョヴァンニーノを納屋に連れて行きました。
 そして、山の様に積み上げてあるまぐさを指さしました。
「これは、何と呼ぶかね?」
「まぐさですよ、おじさん」
「いやいや、この家では、『地面の髪の毛』と、呼ばなくてはならん」
「はい、地面の髪の毛」
 それからも、この家で呼ぶ色々な名前を教えたおじさんは、ジョヴァンニーノが一度で全てを覚えたことに感心すると、
「よし、今日の仕事はこれで終わりだ」
と、安心してベッドに行きました。
 そのあと、ジョヴァンニーノは暖炉の前でおばさんと話をしていましたが、そのうちに、暖炉のそばで寝ていたネコ(ネズミネライ)の尻尾に火の粉が飛んで、メラメラと燃え始めたのです。
 自分の尻尾が燃えてびっくりしたネコは、窓から飛び出すと、まっすぐ納屋へ飛び込みました。
 納屋には、よく乾いたまぐさが山の様に積んであります。
 そして火は、たちまちまぐさに燃え移りました。
「たっ、大変だ!」
 ジョヴァンニーノは、急いでおじさんを起こしに行くと。
「おじさん、おじさん! 『パタパタ、ドンドン』をはいて、すぐに出てきて! 『ネズミネライ』が『地面の髪の毛』に『愉快、愉快』をつけちゃったんですよ。『たっぷり、ちゃぷん』を持って、はやく来て!」
 ところが、おじさんには何の事やら、すぐには飲み込めませんでした。
「『パタパタ、ドンドン』て、何だったかな? 『ネズミネライ』は、何だったかな?」
 そしてうろうろしているうちに、納屋は丸焼けになってしまったのです。

おしまい

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