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 5月23日の日本の昔話
 
 
  
 娘の婿選び
 選細郎
 
 福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
 むかし、ある長者に年頃の一人娘がいました。頭擺頭擺,某個有錢人,有一個好嫁个獨生女。
 
 娘は家の用事で川のそばを歩いていましたが、このところの長雨続きで川は大水です。
 該個妹仔因為屋下个事情在河壩脣行,這駁仔連連續續落水,河壩水當大。
 「まあこわいわ。気をつけて歩かないと。・・・あっ!」
 「還得人驚哪,係無細義兜行。...啊!」
 
 娘は運悪く足を滑らせてしまい、そのまま川に落ちてしまいました。
 妹仔運氣毋好,腳打下蕩溜,跌落河壩肚。
 さあ、大変です。
 壞蹄了。
 見ていた人が川にかけよりましたが、娘はどこへ流されたのか、どこを探しても見つかりませんでした。
 看著个人跳落河壩肚,毋過,毋知沖到哪位去了,滿天尋、尋毋著。
 それを聞いた長者はうろたえ、通りかかった易者(えきしゃ)に娘の居場所を占わせると、
 聽著這件事个有錢人,驚到無結無煞,拜託過路个算命先生卜卦看厥妹仔个下落。
 「ふむ。板ぎれにつかまって、少し向こうの深みに浮いておる」
 と、教えてくれました。
 算命先生講:「m11。抓著一垤枋仔,浮到較深个位所。」
 おかげで娘は見つかりましたが川は大変な大水なので、飛び込んで助ける事が出来ません。
 該載妹仔尋著了,毋過,河壩水當大無法度跳落去救佢。
 そこへ、目の見えない男がやってきて、
 一個青瞑仔來到該位,講:
 「わたくしが、お助けしましょう。なわを用意してくだされ」
 「𠊎來摎你𢯭手,索仔準備好。」
 と、自分の体になわをつけて川に飛び込むと、何とか娘を引き上げてくれました。
 用索仔綯等自家膴身跳落河壩肚,想辦法拉起妹仔。
 
 しかし娘はひどく弱っていて、今にも死んでしまいそうです
 但係妹仔昶虛弱了,像形死忒樣。
 すると今度はそこに医者がかけつけ、ありったけの手当をしてくれたので娘はなんとか命を取り止める事ができました。
 這下,醫生來到了,用盡所有方法來醫,總算摎佢救起來。
 助けてくれた三人に感謝した長者は、お礼に娘を嫁にやることにしましたが、娘は一人なのに助けてくれたのは三人です。
 有錢人為著感謝這三個男仔人个幫忙,決定摎妹仔做獎品,毋過,斯一個妹仔定,𢯭手个人有三儕。
 易者と目の見えない男と医者の、誰に娘をやるかまよいました。
 算命先生、青瞑仔、醫生,佢為著毋知選哪個好,搣到頭暈腦貶。
 
 三人とも命の恩人ですし、三人とも娘を嫁に欲しいと言います。
 三儕都係救命恩人,三儕都講希望摎妹仔結婚。
 「はて、どうしたものかのう」
 「唉哦,仰結煞好哪?」
 困った長者は、名裁きで有名な大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)に頼む事にしました。
 無結無煞个有錢人,決定去問有名个大岡越前守。
 「どうか、大岡さまに娘の婿を選んでいただきたい。三人のうち、誰が娘を一番幸せに出来るか、大岡さまの名裁きをお願いいたします」
 「請,請大岡大人幫忙𠊎選細郎。在三儕裡肚,麼儕最有可能分吾妹仔幸福,請大岡先生決裁。」
 
 「・・・うむむ」
 「...m11」
 今まで数々の難問(なんもん)を解決してきた越前守(えちぜんのかみ)ですが、この時ばかりはさすがに困ってしまいました。
 頭過解決當多困難問題个越前守,這下顛到無結無煞。
 
 「まあ、三日待ってくれ」
 「好,請分𠊎三日時間。」
 とりあえずその日は長者を帰らせて、それから三日間、夜も寝ないで考えました。
 暫時,喊有錢人先轉去,再用三日三夜,毋睡來想。
 
 しかし、良い知恵が浮かびません。
 毋過,想毋出麼个好方法。
 三日たって、再び長者がやって来ましたが、
 三日後,有錢人又來了,
 
 「あと、二日待て」
 と、日をのばしてもらいました。
 講:「再過等加兩日。」  請求延期。  そして、とある滝の近くへ、気晴らしに出かけることにしたのです。
 佢就去就近某隻水沖散心。
 「ふう、困った困った。やっかいな事を引き受けてしまったわ」
 「fun,無結煞,無結煞。惹著麻煩事了。」
 
 岩に腰をおろしてボンヤリと滝をながめていると、ふと、話し声が聞こえてきます。
 坐在岩石頂看著水沖時節,忽然間聽到有講話个聲。
 実は岩の下にほら穴があって、そこを山賊(さんぞく)が隠れ家にしているのでした。
 實際上,在岩石下背有一隻窿,分山賊佔去匟在裡肚。
 耳をすませてみると、なんと今回のさばきについて話をしているではありませんか。
 專心聽,仰會談論這擺決裁有關个事呢?
 
 「さすがの大岡さまでも、あのさばきには頭を悩ませておるそうじゃ」
 「連大岡先生分決裁舞到頭暈腦貶。」
 「おい、きさまなら、どうする?」
 「噯,若係你會仰般做?」
 「決まっておる。わしなら長者の娘婿(むすめむこ)には、易者や医者ではなしに、目の見えん男じゃ」
 「決定了。係𠊎認為有錢人个細郎,毋會選醫生也毋會選算命先生,應該係該個青瞑仔。」
 「ほほう。どうして、そう決められるのだ?」
 「hoho 仰會恁樣決定?」
 「わからんのか?むかしから、『たとえ火の中、水の中』ちゅう言葉があるじゃろうが。」
 「你毋知係無?當久以來,有一句話講:『縱然火裡來水裡去,乜愛拚生拚死。』」
 易者が占いをするのは、当たり前。
 算命先生摎人卜卦,係當然个事。
 
 医者が人を助けるのは、当たり前。
 醫生幫助人,很當然个事。
 それにくらべて目の見えん男は、本当に水の中をくぐって娘を助けたんじゃ。
 比較之下,青瞑仔確實跳落水竇肚去救厥妹仔。
 わしも泳ぎは達者だが、目をつぶったままでは、とても川に飛び込めん。
 𠊎係當會泅水个人,但係,若係目密密乜毋敢跳落水竇肚。
 だから命がけで娘を救った目の見えん男が、娘を一番幸せにする決まっておる」
 所以,決定摎妹仔交分毋顧生死交干去救佢个青瞑仔,正會分佢最大幸福。
 越前守は山賊の言葉に感心して、目の見えない男を長者の娘婿に決めたということです。
 越前守盡佩服山賊个談話,決定摎有錢人个妹仔嫁分青瞑仔。
 
 「うむ、これにて、一件落着!」
 「m11,這下,又辦好一件事情!」    おしまい煞咧
   
 
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