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 第 51話
 
  
 夢見小僧
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
 
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 投稿者 「ぐっすり眠れる優しいおやすみ朗読」
 
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 制作: ぐっすり眠れる癒しの朗読【壽老麻衣】フリーアナウンサーの読み聞かせ
  むかしむかし、お金持ちのだんなが家で働いている小僧たちにたずねました。「お前たち、正月の二日にどんな初夢(はつゆめ)を見たか、わしに聞かせておくれ」
 「はい、わたしは・・・」
 小僧たちは一人ずつ初夢を話しましたが、最後の小僧だけは初夢を話しません。
 「おらの初夢はいい夢だから、人には話せません」
 むかしからいい初夢は、人に話してはいけないと言われています。
 でもだんなは、その初夢がどうしても気になって言いました。
 「それじゃあ、その初夢をわしが買おう。百文(→三千円ほど)、二百文。・・・えい、一両(→七万円ほど)ならどうだ」
 「いやです」
 「どうしてもか?」
 「はい」
 するとだんなはカンカンに怒って、小僧に怒鳴りつけました。
 「ええいっ、こんな強情(ごうじょう)なやつは、海に流してやる!」
 小僧は粉もちのお弁当を渡されると、本当に小舟に乗せられて海に流されてしまったのです。
 
 小僧の乗った小舟は風に流されて、どんどん沖へ進みました。
 そして小舟は、ある島にたどり着きました。
 小僧が島にあがると、たくさんのサルたちがやって来ました。
 「ウキッ、うまそうな人間だぞ」
 サルたちが歯をむき出して、小僧におそいかかって来ました。
 「うひゃー! あっちへ行けー!」
 小僧はお弁当の粉もちを投げると、サルがひろって食ベている間に小舟に乗ってサルの島を逃げ出しました。
 
 小舟に乗ってしばらく行くと、また別の島にたどり着きました。
 小僧が島にあがると、今度は大勢の鬼たちがやって来て小僧を取り囲みました。
 「うまそうな、人間だな」
 「おれは、頭をもらうぞ」
 「それならおれは、足をもらおう」
 小僧はまた粉もちを投げましたが、鬼たちは見向きもしません。
 鬼たちが小僧につかみかかろうとした時、小僧がさけびました。
 「おらを食うのは、ちっと待ってくれ! そのかわり、だんなにさえ教えなかった初夢を教えてやるから。おらの初夢は、すごい初夢だぞ」
 「よーし。それなら、とっとと話せ」
 「話してやるが、お前たちは、おらに何をしてくれる?」
 そこで鬼たちは、立派な車を引いてきました。
 「これは千里万里(せんりまんり)の車といって、わしらの宝だ。鉄棒で一つたたけば千里(→四千キロ)、二つたたけば万里を行くぞ。これでどうだ」
 「えーっ、これだけ? おらの初夢は、もっとすごいのに・・・」
 小僧がわざとしぶい顔をすると、鬼たちは一本の針を持って来ました。
 「この針は生き死にの針といって、これをひとさしすると、どんな元気なやつもすぐに死んでしまう。だが死にそうなやつをさすと、たちまち元気になる。この宝もやろう」
 「よし、いいだろう」
 小僧は生き死にの針を受け取ると、千里万里の車にひょいと飛び乗って鉄棒で一打ちしました。
 すると千里万里の車はぴゅーーんと走り出し、くやし涙をこぼす鬼たちを残して海をこえました。
 
 風のように走った千里万里の車が止まったのは、川近くにある大きなお屋敷の近くでした。
 大きなお屋敷では、大勢の人が出たり入ったりしています。
 「なんだろう? みんな、あわてたようすだけど」
 小僧が近くの人に聞いてみると、このお屋敷の一人娘が病気で、今にも死にそうだという事です。
 それを聞いた小僧は、さっそくお屋敷の中へ入って行きました。
 「オホン。わたしは医者だが、娘さんの病気をなおしてあげよう」
 小僧はそう言って鬼から手に入れた生き死にの針を取り出すと、娘さんの体にチクリとさしました。
 するとたちまち娘さんが元気になったので、家の人は大喜びです。
 「お前さまは、娘の命の恩人です。どうか、娘のむこになってくだされ」
 「ああ、いいよ」
 それから小僧は、毎日ごちそうを食ベて楽しく暮らしていたのですが、ある日、川向こうのお金持ちの家でも娘が病気になり、ぜひなおしてほしいと頼んできたのです。
 そこで小僧が生き死にの針をさして娘さんを元気にしてやると、この家のお金持ちのだんなが言いました。
 「あなたは、娘の命の恩人です。どうか、娘のむこになってくだされ」
 「でも、おらの体は一つだから、二人のむこにはなれねえ」
 するとお金持ちのだんなは、二軒の家の間の川に金の橋をかけてくれました。
 そこで小僧は光り輝く金の橋を渡って、一ヶ月の半分をこちら側、あとの半分を川向こうの家で過ごすことになりました。
 
 小僧の見た初夢とは、二人の娘の間にかかる金の橋を渡る夢だったのです。
 おしまい   
 
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