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第 101話
イモの大きさ
彦一のとんち話 → 彦一について
・日本語(Japanese) ・英語(English) ・日本語(Japanese)&英語(English)
英訳翻訳者 花田れん
むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
彦一の村近くの八代の町に、徳平さんという金持ちのご隠居がいました。
徳平さんは、
「自分は生まれてから、まだ一度も人にだまされたことがない。もし自分をだませる者がいれば、望み通りのほうびをやる」
と、いつも言っていました。
それで町人たちは、ほうびをもらおうと知恵をしぼって、徳平さんをだましに出かけますが、いつも徳平さんに、やっつけられてしまいます。
さて、町に野菜を売りに行って、この話を聞いた彦一は、何を考えついたのか、
「それなら、わたしがだましてみせます」
と、徳平さんに面会を申し込みました。
彦一が庭先で待っていると、ニコニコ顔の徳平さんが現れました。
「これ小僧、お前は知恵者と聞くが、一体どんな嘘で、わしをだますつもりだ?」
「はい、ご隠居さん、お聞きください。今年わたしが作ったサツマイモの中に、こんな四斗樽ほどのやつがありましたよ」
彦一は、手を大きく広げて見せました。
すると徳平さんは、大笑いして言いました。
「うあはははは。そんな大きなサツマイモが世の中にあるものか。わしはだまされないぞ」
すると、彦一は頭をかいて、
「いかにも、これはしくじりました。実は、五升樽ほどです」
「いや、そんな大きな物もない」
「では、このくらい。一升徳利ほどで」
「いや、それでも大きすぎる」
「では、一合が入る、徳利ほどで」
彦一が、両手の指で輪を作ると、徳平さんもうなずいて、
「うん、そのくらいなら、よくある大きさだ。どうだ小僧! わしをだます事は出来ないだろう」
と、言いました。
すると彦一は、腹をゆすって笑い出しました。
「うあはははははは」
「小僧、なぜ笑う?」
彦一は、にこにこして答えました。
「だってご隠居さん。あなたは見事にだまされたのですよ」
「えっ、どうしてだ? 一合徳利ぐらいの大きさなら普通だろう。たとえサツマイモを作ったのが嘘でも、だまされた事にはならんわい」
「でもご隠居さん。いまは夏の始まりで、サツマイモは、やっとつるを畑に植えたばかりです。今年のサツマイモは、まだ小指ほどにもなっていませんよ」
それを聞いた徳平さんは、思わずひざを叩きました。
「しまった! お前があんまり、大きさの事ばかり言うものだから、イモが出来る季節の事を忘れていたは」
こうして彦一は、約束通り徳平さんにほうびをもらって村に帰りました。
おしまい
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