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福娘童話集 > 日本昔話 > その他の日本昔話 >「茶の実」と「茶飲み」 彦一のとんち話

第 111話

「茶の実」と「茶飲み」

「茶の実」と「茶飲み」
彦一のとんち話 → 彦一について

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。

 ある日の事、彦一が庄屋さんの家に行くと、庄屋さんが難しい顔で頭を悩ませていました。
「はてさて、どうしたものか・・・」
 彦一が、庄屋さんに声を掛けました。
「庄屋さん、何かありましたか?」
「ああ、彦一か。実はな、新しく担当になったお役人から『茶の実』を殿様へ献上(けんじょう→身分の高い人への贈り物)する様に言われてな」
 『茶の実』とは、お茶の木の実で、『茶の実』から取り出す油は風邪や虫歯の予防、肌の塗り薬としても使える便利な物です。
「『茶の実』ですか? しかし村には茶の木が少なく、とても献上するほどでは」
「そうじゃが。新しいお役人は、まだ領内の事に詳しくないとみえて」
 新しい役人に『茶の実』はないと言うのは簡単ですが、今後の事もあるので、役人の顔を潰すような事はしたくありません。
 すると彦一が、にっこりと笑って言いました。
「庄屋さん、『ちゃのみ』はいくらでもありますよ。わたしが用意するので、心配はいりません」

 それから数日後、彦一は十数人の老人と共に城へ現れました。
「申しつけの『ちゃのみ』を集めて来ました」
 その知らせを聞いた担当の役人が、不思議そうな顔で彦一に尋ねました。
「彦一よ、この者たちはなんじゃ? 殿へ献上する様に言ったのは『茶の実』であるぞ」
「はい。ですから『ちゃのみ』を集めました」
「???」
 役人は首をかしげましたが、相手はとんちで有名な彦一です。
「・・・少し待っておれ」
 自分の手に負えないと考えた役人は、この事を殿様に伝えました。

 役人から話を聞いた殿様は、嬉しそうな顔で言いました。
「彦一め、何かとんちを考えたな。よい、彦一とその者たちをここに通せ」

 彦一と十数人の老人たちが城の中へ通されると、殿様が言いました。
「これ彦一よ。『茶の実』を持参したと聞いたが、これはどういう事じゃ?」
 彦一が、うやうやしく答えます。
「これにひかえました老人たちが、持参した『茶飲み』でございます」
「これが『茶の実』だと?」
「はっ。この者たちは皆が働き者でしたが、今は隠居(いんきょ→仕事をやめて、老後を過ごしている人)して、朝から晩まで茶を楽しむ立派な『茶飲み』でございます」
「『茶の実』、『ちゃのみ』、『茶飲み』・・・。うむ、なるほど、なるほど。確かにこれは立派な『茶飲み』じゃ」
 彦一の言葉を理解した殿様は、満足そうに笑いました。
 そして殿様は、彦一の後ろにいる老人たちに言いました。
「『茶飲み』たちよ。隠居するその年まで、よく働いてくれた。これからも余生を楽しむとよいぞ」

 殿様はここにいる老人たちだけでなく領内の老人たち全員に、自分が飲んでいる高級な茶葉と茶菓子を褒美として配りました。

おしまい

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