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第 12話
うでをみがいた兄弟
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むかしむかし、あるところに、仲のよい三人の兄弟がいました。
ある時、一番上の兄さんが言いました。
「わしらも、もう一人前の大人だ。これから旅へ出て、何か腕をみがいてこようではないか」
あとの二人も賛成し、三人は旅に出ることにしました。
しばらく行くと、道が三つにわかれています。
そこで、一番上の兄さんが言いました。
「それじゃ、三人べつべつの道を行こう。三年たったらもどってきて、それぞれの腕前を見せっこしよう」
一番上の兄さんは、右の道を行きました。
二番目の兄さんは、まん中の道を行きました。
すえっ子は、左の道を行きました。
それから、三年がたちました。
三人の兄弟は約束どおり、自分の家にもどってきました。
一番上の兄さんが、すえっ子に聞きました。
「お前は、何を習ってきた?」
「おら、散髪屋(さんぱつや)で腕をみがいてきた」
「なるほど。で、お前は何を習ってきた?」
二番目の兄さんに聞きました。
「おらはかじ屋で、ウマの金ぐつを作る腕をみがいてきた」
「なるほど、二人ともよくがんばったな」
「それで兄さんは、何を習ってきた?」
すえっ子が聞きました。
「おらは、侍屋敷で柔術(じゅうじゅつ)を習ってきた。どんなものだって投げとばせるぞ」
「へえ、すごいなあ」
二人の弟が感心していると、ウサギがピョンピョンとかけてきました。
「よし、おらの腕前を見せてやる」
すえっ子は飛び出すなり、手に持ったハサミで、はねているウサギの毛をきれいにかりとってしまいました。
もちろん、ウサギにはキズ一つありません。
「おみごと!」
一番上の兄さんと二番目の兄さんが、手をたたきました。
するとそこへ、ウマに乗った人が通りかかりました。
「ようし、今度はおらの番だ」
二番目の兄さんは飛び出すなり、歩いているウマの四本の足の金ぐつを、新しいのにとりかえてしまいました。
あまりにも素早くて、ウマも乗っている人も、金ぐつをとりかえた事に気づきません。
「おみごと!」
今度は、一番上の兄さんとすえっ子が手をたたきました。
「二人とも大した腕前じゃ。やっぱり旅に出かけてよかった」
一番上の兄さんがよろこんでいると、きゅうに大雨がふってきました。
弟たちが、あわててかけだそうとすると、
「待て待て、ここはおらにまかせておけ」
言うなり、一番上の兄さんはふりかかってくる雨つぶを、両手で素早くはねかえしました。
「おみごと、おみごと」
言いながら弟たちは、一番上の兄さんのおかげで雨にぬれずに、家に帰っていきました。
家にもどった三人兄弟は、それからも自分の腕をみがいて、いつまでも仲良くくらしたという事です。
おしまい
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