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第 205話

もちのなる木

もちのなる木
長崎県の民話長崎県情報

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 むかしむかし、あるところに、お金持ちの兄さんと貧乏な弟がいました。
 弟は朝から晩まで一生懸命に働くのですが、それでも貧乏なのです。
 そこで、兄さんのところへ行って、
「兄さん、お金を貸して下さい」
と、頼みました。
 でも、けちん坊な兄さんは、
「ふん! お前なんぞに貸す金はないわ!」
と、弟を追い返してしまうのです。
 弟は、くやしくてたまりません。
(何とか、兄さんをやっつける方法はないだろうか)
 あれこれ考えているうちに、良い事を思いつきました。

 弟は山へ行って形の良い木を見つけると、根から掘り起こして家に持って帰りました。
 そしてそれを家の庭に植えると、家に残っている全ての米を蒸して、もちをつきました。
(ああ、うまそうだな)
 お腹が空いていたので、弟は思わず食べそうになりましたが、
(駄目だ、駄目だ。兄さんをやっつける為に、我慢しないと)
と、何とか我慢して、そのもちを山から持ってきた木の枝にくっつけました。
 そして兄さんに聞こえる様に、わざと大きな声で言ったのです。
「すごいすごい。これはすごいぞ! 木に、もちがなったぞ!」
「何? 木にもちだと?!」
 弟の声を聞いた兄さんが、すぐにやって来ました。
 兄さんが見てみると、何と木にはたくさんのもちがなっています。
「これはすごい、本当にもちがなる木だ」
 兄さんはもちのなる木が欲しくなり、弟にたくさんのお金を渡すと、奪う様にもちのなる木を持って帰りました。
 家に帰った兄さんは、さっそく木についているもちを焼いて食べました。
 そのうちに、もちはすっかりなくなりました。
「まあいい、そのうちに、またもちがなるだろう」
 そして何日も何日も、木にもちが出来るのを待っていたのですが、もちはいっこうに出来ません。
 兄さんはとうとう腹を立てて、弟のところへ怒鳴り込んで来ました。
「このうそつきめ! もちはあれっきりで、後はただの一つもならないじゃないか!」
 すると弟は、すました顔で言いました。
「兄さんは、あの木になっていたもちをみんな食べたのかい? もしかして、一番てっぺんになっていた一番大きなもちも」
「当たり前だ」
「ああ、それじゃ駄目だよ。その一番大きいもちは、親もちだよ。その親もちさえ食わなかったら、どんどん子どもを産んで、たくさんのもちがなったのに」
「・・・そう、そうだったのか」
 兄さんはガッカリして、とぼとぼと家に帰っていきました。

おしまい

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