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第 358話

岩屋の鬼を退治した呉服屋

岩屋の鬼を退治した呉服屋
香川県の民話香川県の情報

 むかしむかし、ある大きな岩屋(いわや)に、鬼が住んでいました。
 鬼は手下に大勢の山賊を従えており、山賊は鬼の命令で町から色々な物を盗んで来ると、鬼の岩屋で食べたり飲んだりしたそうです。
 ある日の事、鬼が手下の山賊に向かって命令しました。
「嫁が欲しい。若くてきれいな女を連れて来い」
 そこで手下が町へ行って、きれいな女を探していると、呉服屋(ごふくや)に若くてきれいな嫁がいたのです。
 そこで手下は、たくさんのお金を持って、その呉服屋へ行きました。
 そして、そのお金で買えるだけの着物を買いたいと言うと、呉服屋の主人は上客が来たと喜んで、手下たちにお酒を出してもてなしたのです。
 そして手下はたくみに主人にお酒を飲ませると、主人が酔いつぶれた隙を見計らって、着物を入れる箱に呉服屋の嫁を押し込んで、そのままその箱をかついで鬼の岩屋へと連れて行ったのです。
 そして呉服屋の嫁を見た鬼は、その嫁をとても気に入って、さっそく自分の嫁さんにしたのです。

 さて、酔いから覚めた呉服屋の主人は、大事な嫁が連れさらわれた事を知ってびっくりです。
 そして店を家の者に任せると、嫁捜しの旅に出かけたのです。
 何の手がかりもないまま旅を続けた主人は、三年目のある日、鬼の手下たちと宿で相部屋となったのです。
 主人は手下の顔を覚えていましたが、手下は主人の顔を覚えていない様子です。
 そこで主人は手下たちに酒を勧めながら、面白い話はないかと尋ねました。
 すると手下の一人が、
「あるとも。これは以前、わしが鬼の手下になって山賊をやっていた時の事じゃ。わしは鬼の命令で、ある町の呉服屋の家内を捕まえて来て、鬼の女房にしたことがあるのだ」
と、言ったのです。
(やはり、こいつらがわしの嫁を!)
 主人はさらに酒を勧めて、鬼の事や鬼の居場所を聞き出しました。
 それによると鬼は、今でも岩屋に住んでいて、夜は盗みをするために出かけており、昼間はずっと寝ているのだそうです。
 そこで主人は夜になるのを待って、鬼の岩屋へと忍び込みました。
 すると岩屋の中には、嫁が一人でしょんぼりと座っていたのです。
「無事だったか! お前を迎えに来たぞ!」
 嫁は主人を見ると、泣いて喜びました。
「あなた。よく助けに来てくれました」
 そして、もうすぐ鬼が帰って来る時間だからと、嫁は主人を階段の下へ隠したのです。
 やがて、鬼は夜明けと共に帰って来ました。
 鬼は帰ってくるなり、くんくんと家の中のにおいをかぎ始めます。
「なんだ? 人間くさいぞ」
 すると嫁は、
「それは、わたしのお腹に、赤児が宿ったせいですわ」
と、言ったのです。
 すると鬼は喜んで、
「そうか、それはめでたい」
と、酒をあびるほど飲んで、そのまま大いびきをかいて寝てしまいました。
 すると嫁は、階段の下に隠した主人を呼び出して、
「さあ、今のうちに鬼をやっつけてください」
と、鬼が盗んできた宝物の中から、何でも切れるという名刀を取りだして主人に手渡しました。
 そこで主人は寝ている鬼の首をはねて、鬼を退治したのです。

 そして無事に嫁を助け出した主人は、以前にもまして呉服屋を繁盛させ、多くの子宝にも恵まれて、末永く幸せに暮らしたということです。

おしまい

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