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2月14日の日本民話 2
モグラ退治
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むかしむかし、山口のある村では、冬になると大きなモグラが年頃の娘をよこせと言ってくるのです。
そしてそれを断ればモグラは大暴れして、畑を掘り返したり田んぼの水を抜いたりして、村に大きな害をあたえるのです。
そこで毎年、冬が近づくと村はひっそりして、だれもが、
「大モグラは、今年はどこの家の娘をよこせといってくるだろう?」
と、心をいためていました。
ある年の事、大モグラは庄屋の美しい一人娘がほしいといってきました。
そしていよいよ、娘を大モグラのところへ連れていく日の夕方がやってきました。
両親も村の人たちも悲しみにしずんでいるところに、一人の旅の若者が通りかかり、庄屋の家の人たちが泣いているのを見ていいました。
「泣くことはありません。わたしがそのモグラを退治してやりましょう」
すると庄屋は、困った顔で言いました。
「それはありがたいことですが、あれはおそろしい大モグラです。あなたにもしものことがあったら」
「いやいや、ご心配はいりません。わたしはモグラ退治のおまじないを知っておりますから」
そういうと、若者は娘の着物を借りて身につけました。
そして棒の先にわらを巻きつけて、大モグラがすんでいるという、村はずれの草むらに出かけていきました。
若者だけでは心配なので、庄屋は力の強い村の者を六人ばかり選んで、ひそかにあとをつけさせました。
やがて日が沈むと、草むらの土がむくむくと盛りあがって、土の中からイノシシほどもある大モグラが姿を現しました。
大モグラは娘の美しい着物を目にすると、槍のように鋭い前足の爪をたてて飛びかかってきました。
若者は、さっと身をかわすと、手にしている棒を大モグラの頭に打ち下ろしました。
すると棒の先に巻きつけてあるわらが、ヒュウー、ヒュウーと、音をたてて鳴りだし、大モグラは大きなからだをころがして苦しそうにのたうちまわったのです。
そして口の中で呪文のようなものをとなえながら、若者はなおもはげしく、わらのついた棒を打ち下ろします。
そうこうするうちに大モグラは動かなくなり、死んでしまったのです。
こうして村は、やっと平和をとりもどしました。
庄屋は大喜びで、勇気ある若者を娘の婿にむかえることにしたそうです。
おしまい
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