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12月25日の日本民話 2
お稲荷さまの忠告
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むかしむかし、土淵村山口というところに、古くから続く名家がありました。
この家の三代目の孫左衛門という男は、都で流行っている稲荷信仰にはまってしまい、土淵村の屋敷にお稲荷さんの社をたてておまつりしたのです。
ある日の事、孫左衛門の家の梨の木に、とても大きなキノコが生えてきました。
とてもおいしそうなキノコですが、今までだれも見た事がないキノコです。
「食べてみたいが、もし毒キノコだったら」
そこで三代目がさっそくお稲荷さんにお伺いをたてた所、
《食わぬがよし》
と、お告げが出たのです。
こうしてキノコは捨てられたのですが、屋敷に働く下働きの男が捨てられたキノコを拾うと、
「稲荷の使いだか何だか知らんが、キツネの言う事なんかあてになるものか。むかしから、キノコは麻の茎と一緒に洗えば大丈夫と言われておる」
と、キノコ鍋にして食べてしまったのです。
「おおっ、うまい、うまいぞ。こんなにうまいキノコは初めてだ!」
先に食べた男が何ともないのを見て、三代目を始め、家にいたみんながそのキノコを食べてしまいました。
「うまいうまい。本当にうまいキノコだ!」
でもしばらくすると、
「くっ、苦しい! 助けてくれ・・・」
と、キノコを食べた全員がお腹を押さえて苦しがり、外へ遊びに行っていた七歳の娘を残して、みんな死んでしまったのです。
こうして、お稲荷さまの忠告も無視した名家は、ついに絶えてしまったのです。
おしまい
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