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第12話

身代わりにされたクマ

身代わりにされたクマ
ハリスの童話 → ハリスの童話の詳細

 むかしむかし、ある森に、イタズラ好きのウサギがいました。
 ある日、キツネが畑にピーナツのタネをまいているのを見つけたウサギは、フンフンと鼻を鳴らして歌いました。
♪しめたぞ、しめた、ピーナツが土の中
♪どんどん太れ、大きくなーれ
♪今にみていろ、みていろよ
♪たっぷりごちそうになってやる
 秋になりました。
 キツネの畑には、ピーナツがいっぱい実りました。
 けれども、キツネがそろそろ取って食ベようかなと見回りにいくと、だれかに先取りされているのです。
 よく見ると、かきねが破れて、丸い穴があいています。
「ははあん。ここから、取りにもぐったな」
 キツネは、すぐにワナをしかけることにしました。
 そばにはえていた、トネリコ(→モクセイ科の落葉小高木で、家具やスキー板や野球のバットをつくります)のじょうぶな枝を曲げて、その先に輪(わ)をつくりました。
 つぎの朝、さっそくウサギがやってきました。
「しめしめ、きょうもごちそうさま」
 ウサギは、いつもの鼻歌で、かきねの破れ穴に首をつっこみました。
「あっ!」
 たちまちワナがギューッとしまり、トネリコのじょうぶな枝が、ビューンと空にはねあがりました。
 しめつけられたウサギのからだは、トネリコの木の上に宙ぶらりんです。
「えーん、どうしよう。下に落ちるのもこわいし、落ちないのもこわいよう」
 そこでウサギは、いつもの調子で頭をたたいて考えました。
と、ちょうどそこへ、人のいいクマが、ノッシノッシと歩いてきました。
「おおーい。クマさーん!」
「・・・?」
 ウサギがよんでも、クマはキョロキョロするばかりです。
「ここだよ、クマさん」
 クマはウサギの声が、空からふってくるのに、やっと気がつきました。
「なんだい、ビックリさせるね」
 クマは木にぶらさがったウサギを見あげて、目を丸くしました。
「へへへっ、じつはね。今、いいもうけ仕事をしてるんだ。こうして、かかしになって、ピーナツ畑にやってくるカラスを追っぱらってやるだけで、大金がもらえるんだ。よかったら、代わりにやってみる気はないかい?」
「うーん、そんなにかんたんな仕事なら、やってもいいよ」
 クマはウサギと代わって、トネリコの木のワナにはさまりました。
 するとウサギは、キツネのところへ走っていきます。
「おーい、キツネさーん。ピーナツをとった犯人がわかったぞ!」
 ウサギの知らせに、キツネは棒をもってかけだすと、ワナにはまったクマになぐりかかりました。
「な、な、なにをするんだ!」
 クマがウサギと代わったわけを話そうとしても、キツネは聞いてくれません。
「口をなぐれ、思いっきりなぐれ」
 そばからウサギがいうものだから、クマは話すひまがありません。
 そしてその間に、ウサギは逃げてしまいました。

おしまい

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