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第39話

バラ色の泉の水

バラ色の泉の水
フランスの昔話 → フランスの国情報

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
バラの折り紙ばら

 むかしむかし、コルシカ島(→イタリア半島の西方にあるフランス領の島で、ナポレオンの出生地として有名)に、王さまのようなくらしをしている父親と三人の息子がいました。
 りっぱなお城に住み、大変なお金持ちで、めしつかいもたくさんいました。
 三人の息子は元気がよく、父親思いでしたので、お城はいつも笑い声がたえず、島の人たちはみんなとてもうらやましがっていました。
 けれどもある日のこと、突然、父親が目を悪くして、何も見えなくなってしまったのです。
 息子たちはあわてて島中のお医者さまをよんで見てもらいましたが、どのお医者さまにも原因がわからず、なおすことができません。
 そこで、島で一番えらいと言われている博士(はかせ)をよびました。
 博士は父親の目を見て、しずかに言いました。
「バラ色の泉の水があれば、すぐになおります」
 息子たちはすぐにお城を出て、バラ色の泉を探す旅に出ました。
 三人はやがて、三本に分かれている道につきました。
 一番上の兄さんは、一番広い道を進んで行きました。
 すると、とちゅうに子どもをつれた、まずしいみなりの女の人が立っていて、声をかけてきたのです。
「どこへ行くのですか?」
 一番上の兄さんは、女の人の姿を一目見ると、
「お前になんぞに、答える必要はない」
と、いい、先へ進んで行きました。
 広い道は、バラ色の泉に続いていました。
 一番上の兄さんは、おどりあがって喜びました。
 そして、ビンにバラ色の泉の水をくもうとしたそのとき、大きなヘビとライオンが草むらから飛び出してきて、一番上の兄さんを食べてしまったのです。
 二番目の兄さんは、細い道を行きました。
 途中でやっぱり、子どもを連れた女の人に声をかけられましたが、二番目の兄さんは返事もせずに通りすぎました。
 細い道も、バラ色の泉に続いていました。
 ですが泉についたとたん、二番目の兄さんも大きなヘビとライオンに食べられてしまいました。
 三番目の息子は、グネグネとまがりくねった道を歩いて行きました。
 この道にも、子どもを連れた女の人が立っていて、声をかけてきました。
「どこへ行くんですか?」
 三番目の息子は立ちどまって、女の人に話しました。
「はい、目を悪くした父のために、バラ色の泉を探しています。バラ色の泉の水を目につけるとなおるそうなのです」
 女の人は、ほほえんでうなずきました。
 そして、ロウを三番目の息子の手ににぎらせて、やさしく言ったのです。
「気をつけてお行きなさい。バラ色の泉についたら、いろいろな化物があなたをおそうでしょう。でもそのときには、このロウを少しずつちぎって投げるのです。きっとあなたは助かりますから。それから、目をなおすだけなら、バラ色の泉の水を、ほんの一滴つけてあげれば良いでしょう。バラ色の泉の水は、一滴でも死んだ人を生き返らせるくらい力のある生命の水なのですよ」
「よくわかりました。ありがとうございます」
 三番目の息子はていねいにお礼を言って、まがりくねった道をいそぎました。
 まがりくねった道も、バラ色の泉に続いていました。
 三番目の息子は喜び、さっそくビンに水をいれました。
 けれど、ビンにふたをしてふりむいたそのとき、大きなヘビやライオン、ツノのある化物、悪魔(あくま)などが次々とおそいかかってきたのです。
 三番目の息子はポケットからロウを取り出し、ちぎっては化物に投げつけました。
 化物はロウにさわったとたん、
「フギャーー!」
と、さけんで消えてしまったのです。
 三番目の息子は、こうしてバラ色の泉の水のはいったビンをかかえてお城にもどりました。
「おとうさま、ただいま」
 三番目の息子が父親の寝室(しんしつ)にはいると、ベッドのまわりに集まっていためしつかいたちが、わあっと泣き出しました。
 父親は息子たちの帰りを待ちながら、たった今、死んでしまったのです。
 三番目の息子は父親のそばへ行き、バラ色の泉の水をビンから一滴、手の平にとると、そっと父親の目につけてやりました。
「う、・・・ううーん」
 死んだはずの父親が、小さな声を出して、ゆっくりと起きあがったのです。
「ご主人さまが生き返った!」
 めしつかいたちのかなしみの涙は、たちまち喜びの涙になりました。
 三番目の息子は、父親にこれまでのことを話しました。
 目が見えるようになった父親は、まぶしそうに三番目の息子を見つめて、うなずきながら言いました。
「ありがとう。ビンに残ったバラ色の泉の水で、島の人たちを助けてあげなさい」
 三番目の息子は、それから島の人がどんなにひどい病気にかかっても、このバラ色の泉の水で助けてあげました。
 しかし、三番目の息子がおじいさんになり、重い病気になったときには、もう、バラ色の泉の水は残っていませんでした。
 でも、三番目の息子は、
「とても幸せな一生だった」
と、しずかに言うと、天国へ旅だったのです。

おしまい

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