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第40話

バカなオオカミ

バカなオオカミ
スペインの昔話 → スペインの国情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

 むかしむかし、あるところに、あまりかしこくないオオカミが住んでいました。

 ある朝、オオカミが大きな尻尾を振ってみると、
♪ ビュンビュン
と、すてきな音がします。
「おっ、今日は何か良い事がありそうだぞ。
 だって、尻尾がこんなによくなってるもんな。
 きっと、うまい朝飯が見つかるだろう」
 オオカミはニコニコしながら、朝ご飯を探しに行きました。

 しばらく行くと、小さな肉が道に落ちていました。
「よし、さっそくあったぞ!
 ・・・でも、こんなちっぽけな肉じゃな。
 いいさ、すぐにもっとうまいごちそうが見つかるだろう」
 オオカミは小さな肉をひろわずに、先へ進みました。
 やがて向こうから、かわいい子ウマを連れた母ウマがやってきました。
「よしよし、あれだ。
 あの子ウマの肉は、やわらかくてうまそうだぞ」
 オオカミは二頭のウマの前に立ちはだかると、こう言いました。
「お母さんや。悪いがお前の子ウマを朝飯にするぜ」
 すると母ウマは、目になみだをためてたのみました。
「どうぞ、見逃してください。この子はわたしの大事な、一人息子なのです」
「ダメダメ、おれはもう、腹がぺこぺこなんだ」
「・・・・・・」
 母ウマは、ちょっと考えていましたが、すぐにあきらめたように言いました。
「では、運が悪かったとあきらめます。でも子どもを食べる前に、わたしの後ろ足にささっているトゲを抜いてくれませんか。歩くたびに痛くて痛くて、たまらないのです」
「ああ、いいよ。抜いてあげよう」
 オオカミは母ウマの後ろへ回って、体をかがめました。
 するとそのとたん、母ウマは後ろ足をあげて思いっ切りオオカミをけとばしました。
 ガツン!
 けられたオオカミは気を失ってしまい、気がついたときにはウマの姿はどこにもありませんでした。
「ちくしょう! ウマにだまされるなんて、おれはなんてバカなんだ」
 ウマを食べそこねたオオカミは、仕方なく歩き出しました。
 まもなく、牧場(ぼくじょう)が見えてきました。
 牧場には丸々と太ったヒツジのむれが、のんびりと草を食べています。
「よし。あれこそが、本当の朝ご飯だ」
 オオカミは身をかがめると、そっとヒツジたちのそばに近寄りました。
「さあ、誰から食べてやろうか?」
 突然、目の前にオオカミが現れて、ヒツジたちはビックリです。
「許してください。ぼくたちは、あなたに何も悪い事はしていません。どうか見のがしてください」
「だめだ、だめだ! おれはもう、腹ぺこで倒れそうなんだ」
 オオカミがキバをむくと、ヒツジたちは悲しそうに言いました。
「仕方ありません、運が悪かったとあきらめます。
 でも最後に、お願いを一つきいてください。
 ぼくたちは、この牧場をもらったばかりなのですが、死ぬ前に自分たちの土地を決めておきたいのです。
 オオカミさん、あなたは牧場のまんなかに立っていてください。
 ぼくたちは、あちこちから走っていきます。
 一番早くあなたのところへついた者が、一番いい土地をもらうことにしたいんです」
「わかった。では、はやくはじめろ」
 オオカミは、牧場のまん中に立ちました。
 よーい、ドン!
 ヒツジたちは、オオカミめがけて走って行きました。
 そしてオオカミの前からも後ろからも横からもいっせいに、
 ドシン!
と、体当たりしたのです。
「うーん・・・」
 オオカミは気を失ってしまい、気がついた時には、もうヒツジたちは逃げた後でした。
「ちくしょう! まただまされた! おれは、何てバカなんだ」
 オオカミは体中が痛むのをガマンして、また歩き始めました。
 そしてまもなく、野原で草を食べているヤギのむれを見つけました。
「よし、今度こそ」
 オオカミはヤギに近づくと、大声で言いました。
「みんな、覚悟しろ! かたっぱしから、食べてやるからな!」
 突然現れたオオカミに、ヤギたちはブルブルと震え上がりました。
「どっ、どうか、あたしたちを食べないでください。あたしたちを、許してください」
「だめだ、だめだ! おれは腹ぺこで、今にも死にそうなんだ」
 オオカミがキバをむくと、ヤギたちは悲しそうに言いました。
「仕方ありません、運が悪かったとあきらめます。
 でも最後に、神さまへのお祈りをさせてください」
「よし、早くすますんだぞ」
 ヤギたちは岩の上にあがって、メエー、メエーと、お祈りをはじめました。
 するとヤギの鳴き声を聞きつけたヤギの番人が、オオカミの頭を太い棒でなぐりつけました。
 ガツン!
「うーん・・・」
 やがて気がついた時には、もうヤギの姿はありませんでした。
 腹ぺこのオオカミはカシの木の下にすわり込んで、悲しそうに言いました。
「ああ、おれはなんてバカなんだ。ウマや、ヒツジや、ヤギにまで、だまされてしまうんだから。これじゃいっその事、死んでしまったほうがいいや」
 その時、一人の木こりがカシの木に登って、枝を切っていました。
 木こりはオオカミの一人言を聞くと、
「ようし、のぞみ通りに死なしてやるよ」
と、言いながら、オオカミめがけてオノを投げつけました。
 ガツン!
 木こりのオノは、オオカミの頭にみごとに命中。
 オオカミは腹ぺこのまま、のぞみ通り死んでしまいました。

おしまい

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