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第42話

勇敢なオンドリ

勇敢なオンドリ
オーストリアの昔話 → オーストリアの国情報

 むかしむかし、あるお百姓さんの家に、一羽のオンドリと百羽のメンドリがいました。
 ある日オンドリは、元気よくないたあと、元気よく言いました。
「俺は広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い。誰もかれもついて来い」
 百羽のメンドリたちは、
「つれて行って。おねがい」
と、オンドリについて行きました。
 一羽のオンドリを先頭に、百羽のメンドリがにぎやかに歩いて行くと、ウシに会いました。
「どこへ行くんだ? モウー」
 オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
 ウシは、百羽のメンドリのうしろについて行きました。
 しばらく行くと、山ヒツジに会いました。
「どこへ行くの? メェー」
 オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
 山ヒツジは、ウシのあとからついて行きました。
 また行くと、今度はガチョウに会いました。
「どこへ行くの? ガァー」
 オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
 ガチョウは、山ヒツジのうしろからついて行きました。
 また行くと、今度ネコに会いました。
「どこへ行くの? ニャー」
 オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
 ネコは、ガチョウのうしろからついて行きました。
 また行くと、今度はイヌに会いました。
「どこへ行くの? ワン」
 オンドリは、言います。
「広い世界を見に行くぞ。ついて来るならついて来い」
 イヌは、ネコのうしろからついて行きました。
 一羽のオンドリ、百羽のメンドリ、ウシ、山ヒツジ、ガチョウ、ネコ、イヌ。
 みんなは歩いて歩いて、森の中へ行きました。
 日が暮れてくたびれたので、一羽のオンドリを先頭に、一軒のお百姓(ひゃくしょう)さんの家へ行きました。
「今晩泊めてください」
 やさしいお百姓さんは一羽のオンドリ、百羽のメンドリ、ウシ、山ヒツジ、ガチョウ、イヌ、ネコを、部屋にいれてくれました。
 そして、その家の主人が言いました。
「こんなせまいところでよかったら、寝るがいい。だけど世話はできねえぜ。なにしろ夜中にはオオカミが毎晩やって来て、俺を食べようとするのさ。食べられちゃたまんねえから、俺はパンを二つ焼いて、台所のテーブルに置いとかなくちゃなんねえんだ。あとはふるえて寝るだけさ」
 そう聞くと、オンドリが仲間に言いました。
「泊めてくれるこの人をほおってはおけない。力を合わせてオオカミをやっつけよう!」
 それをきいたみんなも賛成して、オンドリの考えた作戦どおりにすることにしました。
 まずガチョウはテーブルの下にかくれ、ネコはかまどの下に、ウシは脱穀場(だっこくば)、山ヒツジは中庭の草の中、イヌは堆肥(たいひ)のかげ、オンドリとメンドリたちは屋根の上に、それぞれかくれました。
 夜中になると、オオカミはいつもどおりに、台所の扉を開けてはいって来ました。
 そのとたん、ガチョウがテーブルの下から飛び出して、口ばしでオオカミの目をつつきました。
 続いて、かまどから飛び出してきたネコが顔をひっかいたからたりません。
 オオカミは、台所から中庭へ逃げ出しました。
 すると、イヌと山ヒツジが飛びかかってきて、逃げるところをウシがツノでさしました。
 それから、オンドリがさけびました。
「それ! いっせいに鳴くんだ!」
 それを合図に、百羽のメンドリたちがいっせいに
「コッコッコー! コッコッコー!」
と、鳴いたので、オオカミはビックリです。
「助けてくれー!」
 オオカミは傷だらけで、森の奥へと逃げて行きました。
 よく朝、お百姓さんはオンドリと仲間たちにお礼を言いました。
 オンドリたちも、お百姓さんに泊めてくれたお礼を言いました。
 そして、オンドリと百羽のメンドリとウシ、山ヒツジ、ガチョウ、ネコ、イヌは、また、世界中を見て回る旅に出ました。

おしまい

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