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第61話
ヒョウの子とカモシカの子
エチオピアの昔話 → エチオピアの国情報
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朗読者 : ぬけさくのいちねん草紙 |
むかしむかし、あるところで、ヒョウの子と、カモシカの子が、なかよしになりました。
まいにち川べで、いっしょにたのしく遊びました。
ある日、ヒョウのお母さんが息子にいいました。
「おまえ、なんだかおかしなにおいがするよ。カモシカのにおいじゃないのかい?」
「そうだよ。カモシカの子と遊んだんだもの」
と、ヒョウの子はこたえました。
「なんてバカな子なの。カモシカは遊ぶあいてじゃなくて、食べ物ですよ。あしたはカモシカの子をだましてころしなさい。そして、家までひきずっておいで。それでこそ、ほんとうのヒョウの子ですよ」
いっぽうカモシカの子も、家へ帰るとお母さんにいわれました。
「おまえ、おかしなにおいがするよ。ヒョウのにおいじゃないかい?」
「そうだよ。ヒョウの子と遊んだんだもの」
と、カモシカの子はこたえました。
するとお母さんは、ふるえあがりました。
「おまえはなんてバカな子だろう。おまえのお父さんも、おじいさんも、みんなヒョウにころされたのを知ってるでしょう。ヒョウの子は、やっぱりヒョウ。わたしたちの敵です。あしたはさそわれても、けっして遊んではいけませんよ。おまえをだまして、ころすにきまっています。ヒョウはみんな、そうやってだますんだからね」
「わかった。お母さんのいうとおりにするよ」
と、カモシカの子はこたえました。
あくる日、ヒョウの子どもは、カモシカの子をさそいました。
「でておいでよ。いっしょに遊ぼう」
「いやだ。もう、きみとは遊ばない」
と、カモシカの子はさけびました。
「どうしてだい? ぼくたちは、なかよしじゃないか」
と、ヒョウの子はいいました。
「きみも、お母さんに教わっただろう。ぼくもお母さんから教わったよ。だから、ぼくらはもう、いっしょには遊べないのさ」
ヒョウの子は、赤くなって帰りました。
お母さんは、ヒョウの子にたずねました。
「おまえ、カモシカをもってこなかったのかい。それじゃ、ほんとうのヒョウとはいえないよ」
するとヒョウの子は、こたえました。
「カモシカの子は、もうぼくと遊びたがらないんだ。ぼくが、ほんとうのヒョウだってわかったからさ」
おしまい
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