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第83話

魔法のツボ

魔法のツボ
ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報

 むかしむかし、あるところに、まずしいおばあさんがすんでいました。
 おばあさんは毎日、食べるものをもらってくらしていましたが、ある日、マメをもらったので、さっそく土にまきました。
 マメはドンドン大きくなって、ついには天までとどくばかりになりました。
 おばあさんは、
(マメの木のてっぺんは、どんなだろう?)
と、思って、のぼっていきました。
 すると、ふしぎな納屋(なや→ものおき)がありました。
 中に入ると、脱穀機(だっこくき)が金のからつぶをガラガラまわしていました。
「ありゃ、これはとんでもないものを見ちまった」
 おばあさんは、あわてて下へおりていきました。
 ところが、いつのまにか、おばあさんのうでの中にツボが入っています。
 ツボの中にはタマゴがいっぱい入っていて、おばあさんはタマゴをそっと、わきの下に入れると、家に帰っていきました。
 ツボは、とてもふしぎなツボでした。
 おばあさんがミルクを飲みたいと思うと、ちゃんとミルクが入っているのです。
 おばあさんが大よろこびしていると、わきの下のタマゴがかえって、
「はい、お母さん、コケコッコーッ」
と、オンドリがとび出しました。
 おばあさんは友だちができたので、うれしくてたまりません。
 ミルクもたっぷり飲めて、食べものをもらうこともなくなりました。
 ふしぎなツボのうわさは、すぐに金持ちの耳に入りました。
 金持ちはある日、
「火事だ!」
と、さわいで、おばあさんの家から、ツボをぬすみ出してしまいました。
 そして、
「ミルクが出せるなら、お酒も出せるだろう」
と、ツボになみなみとお酒を出させて、毎日あびるようにのみました。
 家の者にもお客にも、ドンドン飲ませたので、金持ちの家はよっぱらいだらけになり、村一番のきたならしい家になりました。
「お母さん、ツボをとり返してくるよ」
 ある日、オンドリはおばあさんにいって、金持ちの家までとんでいきました。
 オンドリは、金持ちの屋根にとまるとさけびました。
♪コケコッコーッ
♪金持ちの飲んでるお酒はぬすんだお酒
♪金持ちはとんでもないぬすっとだ
 これを聞いた金持ちも、家の人もビックリ、あわててオンドリをつかまえました。
 金持ちは、オンドリを井戸(いど)になげこみました。
 ところが、オンドリは水をぜんぶ飲みほして、また、屋根の上にとびあがりました。
♪コケコッコーッ
♪金持ちの飲んでるお酒はぬすんだお酒
 金持ちはまた、オンドリをつかまえて、ストーブの中にほうりこみました。
 オンドリは、井戸の水をはき出して火をけすと、
♪コケコッコーッ
♪金持ちはぬすっと
と、さけびました。
 金持ちは、今度は金庫の中にオンドリをとじこめました。
 けれど、オンドリはお金をみんな飲みこんで、金庫をやぶってコケコッコーと出てきました。
「ええい、いまいましい」
 金持ちは、とうとうオンドリの首をきって、焼いて食べてしまいました。
 すると、今度は金持ちのおなかの中から、
♪コケコッコーッ。
 金持ちはほとほとまいって、オンドリをはき出すと、おばあさんの家にツボを返しにいきました。
「コッコちゃん、ありがとうよ」
 おばあさんはオンドリのもってきた金貨とツボのおかげで、つつましく幸せにくらしたということです。

おしまい

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