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第112話

太陽の子ども

太陽の子ども
カナダの昔話 カナダの情報

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
太陽の折り紙たいよう    カモメの折り紙かもめ

 むかしむかし、ある海辺に、若い漁師とおかみさんが住んでいました。
 漁師は毎日、舟に乗って沖へ魚を取りに行きました。
 一人ぼっちになったおかみさんは、猟師が帰って来るまで海辺に座って一日中海を見ていました。

 ある日の事、おかみさんがいつもの様に沖の空を見ていると、一羽のカモメが子どもの鳥と一緒に飛んで来ました。
 それを見て、おかみさんが思わず言いました。
「ああ、わたしも子どもが欲しいなあ」
 するとカモメが、おかみさんに言いました。
「では後ろにある貝がらの中を、見てごらんなさい」
 おかみさんが貝がらを見ると、どうでしょう。
 貝がらの中に、可愛らしい男の赤ちゃんがいるではありませんか。
「赤ちゃん! この赤ちゃんを、わたしに!?」
 おかみさんがカモメに振り返ると、もうカモメの姿は消えていました。
「ああ、あのカモメは神さまのお使いだったんだわ。神さま、ありがとうございます」
 おかみさんは大喜びで、赤ちゃんいを家に連れて帰りました。
 そしておかみさんと漁師は、その赤ちゃんを我が子として大切に育てました。

 やがて赤ちゃんは大きくなり、海辺を走り回る元気な男の子に成長しました。
 でも不思議な事に、男の子は大きくなるにつれて顔が金色に輝く様になり、男の子が岩の上に立つと波は急に静かになるのです。

 ある日、海は大嵐になりました。
 嵐が何日も続き、漁師は海へ出られません。
「困ったな。家の金は底をついたのに、まだ漁に出られないとは」
 すると、男の子が言いました。
「お父さん、魚を取りに行きましょう。ぼくが行けば、きっと嵐は止みますよ」
「とんでもない。こんな嵐に海へ行ったら、舟ごとひっくり返るぞ」
「いいえ、大丈夫です」
 男の子があんまり言うので、漁師は仕方なく一緒に舟へ乗り込みました。
 でも男の子の言った通り、あれほど荒れ狂っていた嵐がうその様に静まってしまい、たくさんの魚が取れました。
「お前は、なぜ嵐を静める事が出来るのだ?」
 漁師が不思議に思って尋ねましたが、男の子は、
「今に、わかりますから」
と、笑うだけでした。

 それから二、三日して、男の子は色々な鳥を捕まえて来て、その羽で色々な上着を作りました。
 男の子は灰色の千鳥(ちどり)の羽の上着を着ると、空へと舞い上がりました。
 すると海の色は、みるみる灰色に変わっていきました。
 その次に青いイソヒヨドリの羽の上着を着て空へ舞い上がると、海はまっ青な色になりました。
 最後に赤いコバシコマドリの羽の上着を着ると、波は金色に輝いて空は美しい夕焼けになりました。
 男の子は、びっくりしている漁師とおかみさんの前へ舞い降りて来て言いました。
「お父さん、お母さん、長い間お世話になりました。
 ぼくは、太陽の子どもです。
 もう一人前になったので、空へ戻らなくてはなりません。
 最後に、良い事を教えましょう。
 夕方、海がぼくの顔と同じ様に金色に輝く時は、決して嵐は来ません。
 そして嵐が来た時は、この上着をお母さんが着て下さい」
 男の子はそう言って、自分の着ていた上着を脱いでおかみさんに渡しました。
「では、さようなら」
 男の子は二人を残して空高く舞い上がると、雲の中に消えてしまいました。

 それからと言うもの、どんな嵐が来てもおかみさんが男の子のくれた上着を着て海辺に立つと、まるでうその様に海は静かになったそうです。

おしまい

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