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第126話
大男のとびじいさん
スウェーデンの昔話 → スウェーデンの国情報
むかしむかし、ある小さな村に、二人のお百姓(ひゃくしょう)さんが隣同士で住んでいました。
一人のお百姓さんはお金持ちでしたが、とてもずるい性格をしています。
もう一人のお百姓さんは貧乏ですが、とても心優しい性格です。
この二人のお百姓さんは、共同(きょうどう)の草かり場を持っていて、毎日そこで働いています。
お金持ちのお百姓さんは、この草かり場を自分だけの物にしたいといつも考えていました。
ある日の事、お金持ちのお百姓さんが、貧乏なお百姓さんに言いました。
「草かりの勝負をしないかね。それで勝った方が、共同の草かり場を全部使うんだ」
「えっ、そんな事をしなくても、二人で仲良く使えば」
「いいね! 勝った方が全部使うからな!」
「・・・・・・・」
お金持ちのお百姓さんに怖い顔でにらみつけられ、貧乏なお百姓さんは、しぶしぶ勝負を引き受けました。
さて、草かり勝負の日がきました。
お金持ちのお百姓さんは、たくさんのお金で大勢の人をやといました。
それにたいして、貧乏なお百姓さんは自分一人だけです。
これでは、やる前から勝負になりません。
貧乏なお百姓さんは、ションボリとためいきをつきました。
「ああ、これで草かり場は、隣の家の物だ。仕事場をなくして、これからどうやって暮らしていけばよいのやら」
すると突然、一人の大男が現れました。
「お前さんは、何をそんなに悩んでいるのかね?」
「はあ、実は・・・」
貧乏なお百姓さんがわけを話すと、大男は笑いながら言いました。
「あはははは。何だ、そんな事でクヨクヨして。よし、このわしが力を貸してやろう。草かりが始まったら、お前さんは『大男のとびじいさん』と三回となえるがいい。それで全て解決だ」
大男はそう言うと、どこかに消えてしまいました。
いよいよ、草かり勝負が始まりました。
「それでは、はじめ!」
お金持ちのお百姓さんは三十人の人たちを連れているので、どんどん草をかっていきます。
貧乏なお百姓さんは一人、ぼうぜんと立ちつくしてしまいました。
(ああ、とても勝てない。もうおしまいだ)
この時にふと、貧乏なお百姓さんは、大男の事を思い出しました。
(そうだ! あの大男を呼ばないと)
貧乏なお百姓さんは、大声で三回さけびました。
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
すると、それを見ていたお金持ちのお百姓さんが、げらげらと笑いました。
「なんだあいつ、頭がおかしくなってしまったのか」
貧乏なお百姓さんは、もう一度大きな声で三回さけびました。
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
するとたちまち、どこからか見上げる様な大男が、大きな草かりガマを持って現れたのです。
そして大男は、あっという間に全ての草をかってしまいました。
「やったー! 『大男のとびじいさん』が、草を全部かってくれた! この草かり場はわたしの物だ。
貧乏なお百姓さんは、大喜びです。
お金持ちのお百姓さんは負けたのがくやしくて、大男をけとばしました。
するとお金持ちのお百姓さんの足が、大男の足にペッタリとくっついてしまいました。
「なにをする。この大男め!」
お金持ちのお百姓さんは、もう一方の足で大男をまたけとばしました。
するともう一方の足も、ペッタリとくっついてしまいました。
大男はお金持ちのお百姓さんをくっつけたまま、どこかに飛んでいって二度と姿を現しませんでした。
草かり場を全部手に入れたお百姓さんは、それから大金持ちになって幸せに暮らしたそうです。
おしまい
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