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第145話

オオカミ退治

オオカミ退治
フランスの昔話 → フランスについて

 むかしむかし、あるところに、キツネの親子が住んでいました。

 ある日の事、お父さんギツネがウナギを捕まえて家へ帰ると、お母さんギツネと子どもたちが大喜びで言いました。
「やったー! 今日はごちそうだぞ!」
「ほんとう、おいしそうなウサギね。さっそく料理しましょう」
 お母さんギツネがウサギを串に刺して焼いていると、家の前をオオカミが通りかかりました。
「おや? いいにおいだな」
 腹ぺこのオオカミはキツネの家へ入ろうとしましたが、戸口がしっかりと閉めているので入る事が出来ません。
 オオカミは、戸口を叩きながら言いました。
「おーい、キツネくん。いい話があるから、開けてくれよ」
 その声を聞いたキツネの家族は、すぐに森の王さまだと気づきました。
 乱暴者でわがままなオオカミは、『森の王さま』という、あだ名がついているのです。
 子ギツネたちは怖がって、ブルブルと震えています。
「おーい、はやく開けてくれよ」
「だれだい?」
 お父さんギツネが聞き返すと、オオカミは親しげに言いました。
「おれだよ」
「おれって、だれだい?」
「森の仲間だよ」
「ほう。わたしはてっきり、泥棒かと思いましたよ」
「ちがうよ。だから、開けてくれ」
「だめです。今日は、神父さんが来る日です。神父さんでない方は、帰っていただきます」
「じゃあ、今すぐ神父さんになるよ」
「では、神父さんになる証拠を見せてください。神父さんになるには、頭の毛を丸くそらないといけませんよ」
「それもそうだな。じゃあ、ちょっと頭をそってくれないか?」
「では、戸口に穴が開いているので、そこに頭をつけてください。わたしが頭をそってあげたら、中に入ってもいいですよ」
「よし、そうしよう」
 オオカミは戸口の穴に、頭を押しつけました。
(よし、いまだ!)
 お父さんギツネはグラグラと煮えたぎっているお湯を、オオカミの頭にザバーッとかけました。
「うわーっ、あつい、あつい! 助けてくれー!」
 頭を大やけどしたオオカミは、命からがら逃げていきました。

 なんとかオオカミをやっつけたお父さんギツネは、得意そうに子どもたちに言いました。
「子どもたちよ。オオカミ退治はこうするんだよ」
 でも、お父さんが子どもたちの方を見ると、子どもたちはまんぞくそうに大きくなったお腹をさすっています。
 お父さんがオオカミ退治をしている間に、子どもたちはごちそうのウナギを全部食べてしまったのでした。

おしまい

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