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第150話
ソロモン王の名裁き
古代イスラエルの昔話 → イスラエルの情報
むかしむかし、同じ部屋に住む二人のお手伝いが、三日の違いで男の子を生みました。
ところが先に生まれた男の子が、突然死んでしまったのです。
子どもが死んだ事に気づいた女は、同じ部屋で寝ているもう一人の女に近づくと、その女の子どもと死んだ自分の子どもを入れ替えました。
朝になり、子どもをすり替えられたお手伝いの女は、自分が抱いている子どもが死んでいるのを見てびっくりです。
「赤ちゃんが! 赤ちゃんが死んでいる! ・・・でも、この子は!?」
死んでいる子どもは自分の子どもではなく、もう一人のお手伝いの子どもでした。
そして、そのお手伝いが自分の子どもを抱いてすやすや寝ているのを見つけました。
子どもをすり替えられたお手伝いは、もう一人のお手伝いに子どもを返してくれるように言いましたが、この子は自分が産んだ子どもだと言い張って子どもを返そうとはしません。
そこで二人はソロモン王に訴え出て、正しい判定をしてもらうことにしたのです。
王は二人の話を聞くと、二人に言いました。
「事情は、よく解った。お前たちに聞くが、生きている子どもが自分の子どもであると言う証拠はないのか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人のお手伝いは肌の色も目の色も髪の色も同じだったので、生きている子どもが自分の子どもだという証拠がありません。
「証拠がないのなら、わしが二人に公平な解決を行う。それがどの様な方法であっても、二人とも文句は無いな」
「はい。お願いします」
「はい。わたしも王にお任せします」
「よし」
王は家来の一人に剣を持ってこさせると、家来に命じました。
「子どもの体を、剣で半分に切り裂け! 半身をこの女に。もう半身をあの女に与えよ」
これを聞いて、二人のお手伝いは悲鳴を上げました。
すると王は、二人に言いました。
「何を驚く?
お前たちは、わしに裁きを一任したであろう。
証拠がない以上、これがもっとも公平な裁きだと思うが」
すると、子どもをすり替えた方のお手伝いが言いました。
「おっしゃる通りです。早く子どもを、切り分けてください。自分の物にならないとしても、その女にとられるのだけは嫌です!」
次に、本当の母親であるお手伝いが言いました。
「いいえ。どうか生きている子を、あの女に与えてください。自分の物にならないとしても、子どもを殺されるのだけは嫌です!」
それを聞いてソロモン王はにっこり笑うと、子どもを本当の母親に渡しました。
そして偽者の母親に、怖い顔で言いました。
「子どもにとって最も良い母親は、自分を大切に育ててくれる母親だ。もし、お前が本当の母親であったとしても、子どもを殺す事に同意する母親には、母親の資格はない!!」
こうして子どもはソロモン王の名裁きにより、本当の心優しい母親の元へ帰る事が出来たのです。
おしまい
日本にも、似たようなお話があります。 → 本当の母親
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