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第156話
クマとお百姓の分け前
デンマークの昔話 → デンマークの情報
むかしむかし、デンマークのある村に、とても広い畑を持っているお百姓さんがいました。
その畑の中には小さな丘があって、そこだけがいつも草でぼうぼうです。
「どれ、ここも畑にしよう」
ある日の事、お百姓さんは丘にやってくると、ぼうぼうの草を引き抜いて、くわで丘をたがやし始めました。
そのとたん、丘の中ほどにあるほら穴に住んでいたクマが飛び出してきたのです。
「こら! どうして、おれの住んでいる丘を壊すのだ!」
お百姓さんはびっくりしましたが、でも平気な顔でクマに言いました。
「おやおや、ここにあんたの家があったなんて、ちっとも知らなかったよ。
でも、こんなにいい土地を草でぼうぼうにしておくのはもったいないだろう。
畑にすれば、色々な物がとれるのに」
「畑にするだと!? そんな事は許さんぞ!」
「いやいや。畑にすると言ったって、あんたの住んでるほら穴まで潰そうと言うのではない」
「なら、どうするのだ?」
「そうだな。ここに種をまいて、秋になって出来た物を二人で分けるのはどうかね?」
「・・・なるほど、それはいいな。だが、このおれに畑仕事を手伝えと言うのか? そんな面倒な事、おれはしないぞ!」
「とんでもない。丘をたがやすのも、種をまくのも、全部わたしが一人でやる。お前さんは、ただ分け前を受け取るだけでいいんだ」
「ふむふむ、働くのはお前で、おれは分け前をもらうのか。なるほど、それはいい話だな。だが、どうやって分ける?」
「まず始めの年は、土の上に出来た物をわたしがもらい、土の中に出来た物は、全部あんたの物さ」
「それじゃ、土の上に出来た物は、いつもらえるんだ?」
「次の年は、土の中に出来た物をわたしがもらい、土の上に出来た物は、全部あんたの物さ。こうやって、一年毎に取る方を取り替える。これでどうだ?」
「よくわかった。秋が楽しみだ」
さて、丘をたがやした百姓さんは、さっそく麦の種をまきました。
秋になり、麦はたくさんの穂をつけました。
それを知ったクマが、にこにこしながらやってきました。
「クマよ。約束通り、土の上の物はわたしがもらうぞ」
お百姓はそう言って、麦の穂を刈ると家に運びました。
土の中に残っているのは、麦の切りかぶだけです。
「ちくしょう。こんな物、食えやしない! ・・・だが、次の年はおれが土の上の物をもらう番だ」
次の年、お百姓さんは畑にニンジンの種をまきました。
秋になると真っ赤なニンジンが育ち、お百姓さんは土の中のニンジンを取って、クマには土の上の葉っぱだけをわたしました。
こうして、お百姓さんは土の中になる作物と土の上になる作物とを毎年入れ替えて、クマをだまし続けたそうです。
おしまい
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