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第167話
七匹目と八匹目のロバ
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むかしむかし、七匹のロバを飼っている男がいました。
ある日の事、男はロバを売る事にしました。
男は市場へ出かける前に、ロバの数を数えました。
「一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹、七匹。よしよし、確かに七匹いるな」
男は先頭のロバに乗ると、後ろのロバたちに言いました。
「お前たち、ちゃんとついて来るんだぞ」
やがて市場が見えてくると、男は急に心配になりました。
「ロバたちは、ちゃんとついて来ているかな? 市場に着く前に、もう一度数えてみよう」
男はロバたちを近くに集めると、声を上げて数え始めました。
「一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹、・・・おや?」
男は首を傾げました。
「どうやら、数え間違えたらしい。もう一度、数えてみよう」
男は間違えないように、ロバたちを指さしながら数え直しました。
「一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹。・・・ありゃ、また間違えた。もう一度、数えてみよう」
それから男は何度も数え直しましたが、いくら数えてもロバは六匹しかいません。
男は、まっ青になりました。
「大変だ。ロバが一頭足りないぞ! ・・・いやいや、数え間違えかもしれん。今度は家に帰って、かみさんに数えさせよう。ほれ、お前たち、来た道を引き返すんだ」
男は家に帰りつくと、大声でおかみさんを呼びました。
「おーい、ちょっと来てくれ」
「あら、お前さん。ずいぶん早かったね。ロバは、売れなかったのかい?」
「いや、困った事に、ロバが一匹足りないんだよ。いくら数えても、六匹しかいなくてな。それで、お前に数え直してもらおうと引き返して来たんだ」
「まあ、それは大変! ・・・あら? でも、ちゃんと七匹いるじゃないの」
「そんな事はない。おれは何度も数えたんだ。
いいか、もう一度数えるぞ。
一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹。ほら、一匹足りないだろ」
それを聞いたおかみさんは、お腹をかかえて笑い出しました。
「あはははは」
おかみさんが笑い転げるので、男は腹を立てて言いました。
「何がおかしい! おれがこんなに心配しているのに!」
「だってお前さん、七匹目のロバは、ちゃんといるじゃないの」
「えっ、どこに? どこにいる?」
「ほら、お前さんのお尻の下に。・・・それどころか」
おかみさんに言われて、ようやく七匹目を見つけた男は、頭をかきながら言いました。
「そうか、こいつはうっかりしていた。ちゃんと七匹いたんだ。・・・それで、『それどころか』とは?」
「いやね、ロバに乗っているお前さんも、ロバと同じくらいのんびりしているから、ここに八匹目のロバがいるなと思ったんだよ」
「・・・・・・」
「あはははは。なにふくれてるんだよ。さあ、今日はもう遅いからロバを売りに行くのは明日にして、晩ご飯を食べましょう」
おしまい
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