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第178話
ムカデの足
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むかしむかし、色々な動物が地上に生まれたばかりのお話です。
地上に生まれたばかりの動物には、まだちゃんとした足がありませんでした。
そこで手先の器用なムカデが、こんな事を考えました。
「ぼくは手先が器用だから、それぞれの動物にぴったりな足を作ろう。足を作ってみんなに売れば、大もうけできるぞ」
そこでムカデは、家の外にこんな看板を出しました。
《ムカデの足のお店 あなたのご注文通りの足を作ります》
それを見て、最初にキリンがやって来ました。
「ぼくは首が長いから、長い首に釣り合った足を作って下さい」
「はい。長い首には、長い足がピッタリですよ」
ムカデはキリンに、細くて長い足を作ってやりました。
ムカデの作った足で背が高くなったキリンは、大喜びです。
次に、カバがやって来ました。
「わしは体が重いから、重い体を支える足を作ってくれないか」
「はい。重い身体には、太くて短い足がピッタリですよ」
ムカデはカバに、太くて短い足を作ってやりました。
カバは重い体を支える足が出来て、大喜びです。
次に、アヒルがやって来ました。
「わたしは、水を泳ぐのが大好きなの。だから、泳ぎやすい足を作ってくれませんか?」
「はい。では泳ぎやすいように、指のあいだに水をかく『水かき』を付けましょう」
ムカデはアヒルに、水かきのついた足を作ってやりました。
おかげでアヒルは、水の上をすいすい泳ぐ事が出来ました。
それから、走るのが好きな馬には、筋肉のついた速い足を。
木登りが好きなネコには、木登りがしやすい爪のついた足を。
ジャンプが好きなウサギには、ピョンピョンと跳ねる事が出来る足を。
木の上で暮らすサルには、手の様に器用な足を。
ムカデはどんな動物の足も、それぞれの希望通りに作ってやりました。
こうしてたくさんの動物に足を売ったムカデは、大金持ちになりました。
けれどムカデは、もっともっとお金が欲しいと思いました。
「よし。もっともっと足を作って、もっともっと、もうけてやるぞ」
そこでムカデは動物たちの注文を受けてないのに、百本の足を作りました。
「さあ、この足を全て売り尽くせば、もっともっと大金持ちになれるぞ」
ムカデは作った百本の足を家の外にならべましたが、どういう事か誰も足を買ってくれません。
「足。足。足は、いりませんか?」
道行く動物たちに大声で言いますが、誰も買ってくれません。
「どうして、誰も足を買ってくれないのだろう? ・・・あっ、そうか!」
なぜなら、地上の動物はみんなムカデから足を買ったので、もう売る相手がいなかったのです。
「これはしまった。
もう、みんなに足を売ってしまったんだ。
まだ足を売っていないのは、足なんかいらないと言っている変わり者のヘビぐらいだし。
・・・どうしよう、この足を捨てようかな?
・・・いや、せっかく作ったのに、捨てるのはもったいないな。
捨てるくらいなら、全部自分の足にしてしまおう」
こうしてムカデは、自分の体に百本の足を付けたという事です。
おしまい
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