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第199話

ダイヤモンドの実がなる木

ダイヤモンドの実がなる木
インドネシアの昔話インドネシアの情報

 むかしむかし、インドネシアのある島に、女ばかりの七人姉妹が住んでいました。
 お父さんもお母さんも死んでしまったので、一番上の姉さんが親の代わりをする事になりました。
 ところが、この姉さんはとても意地悪で、いつも一番下の妹をこき使います。
 それでも一番下の妹は文句も言わず、一日中働きました。
 ある日の事、妹は川でジュルングジュルングという一匹のきれいな魚を捕まえて、近くのほら穴にある井戸の中で飼う事にしました。
 妹は一人ぼっちで悲しくなると、この井戸の前にきて、
♪ジュルングジュルング、出ておいで。
♪おいしいごはんを、あげましょう。
と、歌います。
 すると魚はすぐに浮かんできて、妹の投げる妹のごはんの残りをパクパクと食べるのです。
 ですから魚は、日に日に大きくなりました。
 ですが妹の方は、自分のごはんを魚に与えるので、どんどんやせていくばかりです。
 姉さんたちは、どうして妹がやせていくのか、不思議でなりません。
 そこである日、姉たちは妹の後をこっそりとつけました。
 そうとは知らない妹は、いつもの様にほら穴の井戸のところへ行くと、魚を歌で呼び出して、自分のごはんを投げました。
「はーん。なるほど、あの子は、自分の食べるごはんをあげていたんだわ。・・・それにしても、おいしそうな魚」
 姉さんたちは妹がいなくなると、その魚を捕まえ、家でこっそり食べてしまいました。
 次の日、妹はいつものように、ほら穴にやってきて歌を歌いました。
♪ジュルングジュルング、出ておいで。
♪おいしいごはんを、あげましょう。
 ところが、魚は浮かんできません。
 妹が、がっかりして帰ってくると、一番上の姉さんが言いました。
「あんた、またほら穴に行ってきたの? あんなまずい魚は初めてだったわ。あんたも欲しければ、台所に骨が残っているわよ」
 それを聞いた妹は、びっくりです。
 あわてて台所に行くと、骨だけになった魚が捨ててありました。
「ああ、なんてことなの」
 妹は骨を拾ってほら穴の前に行くと、骨をていねいに埋めて、悲しい声で歌いました。
♪可哀想な、ジュルングジュルング
♪木になって、葉っぱを落としておくれ。
 すると魚の骨を埋めた所から一本の木が生えてきて、見る見るうちに大きくなりました。
 その木は不思議な木で、木のみきは鉄、葉っぱは絹、花は金で出来ています。
 そして大きな木の実は、なんとダイヤモンドだったのです。
 やがて、その絹の葉っぱの一枚が風に吹かれて、この国の若い王さまのお城まで飛んでいきました。
 庭を歩いていた王さまが、その葉っぱを拾いました。
「おや? これは珍しい。何と、絹の葉っぱだ。おーい。だれかこの葉っぱの木を探してくれないか」
 家来たちは島中を探して、やっとこの木を見つけました。
 家来たちに案内されてやってきた王さまは、その木を見てびっくりです。
「なんと、みきは鉄で、葉っぱは絹で、花は金で、実はダイヤモンドか。うーむ、すばらしい。それにしても、どうしてこんな木が生えたのだろう?」
 すると家来の一人が、この木の近くに住んでいる、七人の娘たちのうわさを聞いてきました。
 王さまは、すぐ娘たちを呼びました。
 王さまの使いに呼ばれた六人の姉さんたちは、王さまに会えるというので、思いきりおしゃれをして出かけました。
「お前たち、この木がどうしてここに生えているのか、わけを知っていたら教えてくれないか」
 王さまが言いましたが、でも、六人は答える事が出来ません。
 すると王さまは、娘たちの数を数えながらたずねました。
「ところでお前たちは、七人姉妹と聞いていたが、もう一人はどうしたのだ?」
 一番上の姉さんが言いました。
「はい、もう一人の妹がいますが。でもあれは、汚いおろか者ですから、連れて来ませんでした」
「そうか。しかし、その娘がこの木の事を知っているかもしれん。その娘も連れて来てくれ」
 王さまの命令で、ぼろぼろの服を着た妹が、王さまの前にやって来ました。
 すると、どうでしょう。
 木の枝が一人でに動いて、妹が取りやすい位置にダイヤモンドの実を持ってきたのです。
 妹はダイヤモンドの実を取ると、王さまに差し出して言いました。
「この木は、わたしが植えた木です。王さま、どうぞ、これをお持ちください」
 ダイヤモンドを受け取った王さまはすっかり喜んで、妹に新しい服を着せました。
 そして王さまは、妹の手を取って言いました。
「お前は素晴らしい娘だ。きっとお前のやさしさが天に届いて、こんな不思議な木が育ったのだろう。どうだろう、わたしのお后になってはくれないか?」
「はい、王さま」
 妹は、にっこりうなずき、王さまと一緒に一生幸せにくらしたという事です。

おしまい

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