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第208話

よくばりなエスキモー

欲張りなエスキモー
カナダの昔話 → カナダの情報

♪音声配信(html5)
朗読者 : おはなしや

 むかしむかし、エスキモーの村に、一人の男が住んでいました。
「そろそろ、白鳥が来る季節だな。よし、白鳥を取りにいこう」
 男が湖の岸で身をかがめて待っていると、二羽の白鳥が氷の溶け出した湖の上をゆっくりと泳いで来ました。
(しめしめ。二羽とも捕まえてやるぞ)
 男は白鳥たちが岸に近づいて来ると、
(今だ!)
と、いきなり飛び出して、二羽の白鳥の足を両手でつかみました。
 びっくりした白鳥は飛び立とうとしますが、男は白鳥の足を離しません。
(逃がすものか! 二羽とも手に入れるんだ!)
 やがて二羽の白鳥は男を足にぶらさげたまま、空へと舞い上がりました。
 男は白鳥にぶら下がったまま、どんどん遠くへ飛んでいきます。
 しばらくすると、向こうに海が見えてきました。
 海にはところどころに大きな氷の固まりがあるだけで、あとは冷たい海がどこまでも広がっています。
(まずいぞ!
 このままでは、白鳥たちは海の上へ舞い降りるかもしれない。
 そうしたら、おれはおぼれ死んでしまうぞ)
 そこで男は仕方なく、一羽の白鳥を逃がす事にしました。
 一羽だけなら男が重くて、うまく飛べないと思ったのです。
 男が一羽を逃すと、思った通り一羽だけになった白鳥は男を引っ張りきれずに、だんだんと下の方へ降りていきました。
 そしてぎりぎり海の手前で、白鳥は地上に降りました。
「ふーっ、危なかった。
 あのまま片手を離さなかったら、今頃は冷たい海の中だ。
 やっぱり、欲張ってはいけないな」
 男はそう言うと、一羽だけになった白鳥を家に持って帰りました。

おしまい

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