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第215話

馬のタマゴ インドの昔話

馬のタマゴ
インドの昔話インドの情報

 むかしむかし、六人の若者たちが旅に出ました。
 旅を続けるうちに、荷物を背負うのが面倒になってきました。
「なあ、馬を一頭手に入れて、その馬に荷物を乗せないか?」
「そうだな、それがいい」
 みんなが賛成したので、馬を手に入れようと言い出した若者が馬を買いに行く事にしました。
 ところがこの若者、少し頭が弱く馬をどこで手に入れて良いか分かりません。
 いえそれどころか、馬という生き物をよく知りませんでした。
 若者がてくてく歩いていると、草原で草を食べている馬の親子を見つけました。
「あっ、馬がいた。あれを捕まえよう」
 若者はそう言うと馬に近付きましたが、若者に気づいた馬はどこかへ逃げてしまいました。
「しまった、にげられたか」
 ちょうど馬が草を食べていた近くにカボチャ畑があり、大きなカボチャの実がいくつもころがっていました。
 若者は、初めて見るカボチャが何か分かりません。
「なんだろう。この大きな物は。・・・もしかするとこれは、馬の卵では」
 そう思った若者は、畑仕事をしている男の所へ行って言いました。
「すみません。馬の卵を一つ売って下さい」
「はっ? 馬の卵?」
「はい、馬の卵です。旅をしているのですが、荷物をのせる馬を手に入れようと思うのです」
 畑の男は変な顔をしていますが、この若者の頭が弱いと知って急に態度を変えました。
「はいはい、馬の卵ですね。それなら良い卵がありますよ。少し値ははりますが、立派な馬が産まれますよ」
 畑の男はそう言って、くさりかけたカボチャを若者に差し出しました。
「やあ、これは立派な卵だ」
 頭の弱い若者は畑の男から言われるまま、くさりかけたカボチャを普通のカボチャ10個分の値段で買い取りました。
 畑の男が頭の弱い若者に言います。
「馬の卵を運ぶときは、手に持たず頭に乗せて運んで下さい。そして注意して下さいよ。馬の卵を途中で落として割ってしまうと、卵の中の馬が逃げてしまいますから」
「うん分かった、ありがとう」
 頭の弱い若者はカボチャを頭に乗せると、バランスを取りながら仲間のところへ帰って行きました。
 でもその途中、頭の上のカボチャが木の枝に引っかかって、ゴロンと落ちてしまったのです。
 くさりかけのカボチャは、『グチャ!』と音を立てて割れました。
 するとその音にビックリした一匹の野ウサギが、あわてて逃げていきました。
「あっ、こら待て! 逃がすものか!」
 逃げていくウサギをタマゴの中から飛び出した子馬だと思った若者は、あわててウサギを追いかけましたが、ウサギはとても速くて捕まえる事が出来ません。
 ガッカリした若者は、仲間たちのところへ帰ると悔しそうに言いました。
「せっかく馬の卵を買ったのに、卵が割れて子馬が逃げてしまったよ」

おしまい

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