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第226話
ラ・ダナの森の化け物
インドネシアの昔話 → インドネシアの情報
むかし、インドネシアのセレベス島のある村に、ラ・ダナという若者が住んでいました。
ラ・ダナは友達と川へ釣りに行きましたが、魚が釣れるのは友達ばかりで、ラ・ダナはさっぱり釣れません。
「おやおやどうした、ラ・ダナ。まだ一匹も釣れないのかい? おれはこんなに調子がいいぞ」
友達の少しバカにした言い方に腹を立てたラ・ダナは、友達にこんな事を言いました。
「そう言えば、この川に化け物が出たという話を聞いた事はないか?」
「化け物?」
「ああ、何でも釣りに来た人に襲いかかって、その釣り人を食べてしまうそうだ。だが、釣った魚を置いて逃げれば、それ以上は追って来ないそうだ」
ラ・ダナの言葉に、友達はビックリです。
「そ、そんな化け物がいるとは・・・。その化け物は、どんな姿をしているんだ?」
「ヤシの葉の服を着た、すごい顔の化け物だそうだ。
そんなのに出会ったら、釣った魚を置いて逃げ出さないとな。
・・・あ、そうそう、ぼくはもう少し離れた場所で魚を釣る事にするよ」
ラ・ダナはそう言って、別の場所へと移動しました。
ラ・ダナは川ではなく森に向かうと、ヤシの葉で服を作り、ゴムの木の汁を顔に塗って色々な木の実を顔に付けました。
それから友達が釣りをしている所に戻ると、大声を上げながら友達の前に飛び出したのです。
「うぉーーっ! おれは森の化け物だ! 命がおしくば、魚を置いて逃げるがいい」
「出たーっ!」
友達は釣った魚を投げ出すと、一目散に逃げ帰りました。
「よし、うまくいったぞ」
ラ・ダナは元の姿に戻ると、友達が置いていった魚をカゴに入れて村へ帰りました。
そして逃げ帰った友達の家に行くと、友達が真っ青な顔で震えながら出て来て言いました。
「ラ・ダナ、ラ・ダナ。出た、出たんだ! 森の化け物が出たんだよ!」
ガタガタと震える友達に、ラ・ダナはカゴに入った魚を見せながら言いました。
「それは大変だったな。
まあ、命を取られなかったのは幸運だ。
ぼくの方は、あれから魚がドンドン釣れてね。
半分分けてやるから、もう震えるのはやめなよ」
おしまい
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