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第227話

ラ・ダナの幸運の水

ラ・ダナの幸運の水
インドネシアの昔話インドネシアの情報

 むかし、インドネシアのセレベス島のある村に、ラ・ダナという若者が住んでいました。
 隣村の友達の所へ遊びに行ったラ・ダナは、帰り道に喉が渇いたので辺りを見回しました。
 すると大きな木の下に、ヤシの実の汁をたっぷりと入れた三つのツボがありました。
 このツボは村人達が、色々な実をならしてくれる木の神さまに供えたお供え物でした。
「こいつは、ありがたい!」
 ラ・ダナは、ツボに入ったヤシの実の汁を全部飲み干しました。
「あー、うまかった」
 するとそこへ、新しいお供え物を持った村人達がやって来たのです。
「まずい、お供え物を盗んだとばれたら叱られる」
 ラ・ダナは急いで木に登ると、葉のかげに隠れました。
 村人達はごちそうを供えると、木の神さまにお祈りを始めました。
「木の神さま。いつも私たちにおいしい実を与えて下さりありがとうございます。私たちは木の神さまに・・・」

 村人達のお祈りをしばらく見ていたラ・ダナですが、先ほどヤシの実の汁をたくさん飲んだので、おしっこがしたくなりました。
 でもこんなところでおしっこをすると、下にいる村人達に隠れているのが見つかってしまいます。
(困ったな、お祈りはまだまだ終りそうにないし・・・。そうだ!)
 ラ・ダナは葉っぱを口に入れて声を変えながら、下の村人達に言いました。
「村人達よ! わしは木の神だ。お前達の供え物は受け取った。その礼に幸運の水を与えよう」
 それを聞いた村人達は驚いて、神さまを見ては失礼だとあわてて地面にひれふしました。
「よし、そのまま目を閉じ、決して顔をあげない様に」
 ラ・ダナの言葉を神さまのお告げだと信じた村人達は、地面にひれふしたままピクリとも動きません。
 そんな村人達に、ラ・ダナは木の上からジャージャーとおしっこをしたのです。
(ふーっ、スッキリした)
 おしっこを終えたラ・ダナは、地面にひれ伏したままの村人達に言いました。
「今の温かい水は幸運の水だ。お前達にはやがて幸運が訪れるであろう。さあ、もう帰ってよろしい。決して上を見ず、真っ直ぐ家に帰るのだ」
 村人達は幸運の水をかけてくれた木の神さまに感謝をすると、そのまま家に帰っていきました。

おしまい

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