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第236話
お釈迦さまの誕生
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むかしむかし、ヒマラヤのふもとに、カピラバスツという国かありました。
美しくて平和な国でしたが、この国の王さまは、跡継ぎの王子さまが生まれないのが心配でした。
ところが妃のマーヤーが眠っていると、夢の中で白いゾウが現れて、マーヤーのお腹に入ってきたのです。
「白いゾウの夢とは、めでたい」
この話しを聞いた国中の人々は、これはきっと王子さまがお生まれになるお告げだと喜びました。
そして本当に、マーヤーのお腹に子どもが宿ったのです。
さて、春になって一面に花が開く頃になると、マーヤーは赤ちゃんを生むために自分の国へ帰ろうとしましたが、でもその途中のルンビニまで来たとき急に産気づいて、王子が生まれたのです。
王子は生まれると、生まれたばかりだというのに、すぐに七歩歩き、小さい右手で天を差し、左手で地を指さして、こう言ったのです。
「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげ ゆいがどくそん)」
すなわち、
『わたしは、世界中の人々が、みんな幸せになるために生まれてきた』
と、言うような意味です。
するとこの時、どこからか美しい音楽がなりひびき、天から銀色の甘い味のする雨が降ってきたそうです。
この王子こそが、お釈迦さまなのです。
それは、今から二千五百年前の四月八日の事です。
今でも、その日をお祝いする『花祭り』というお祭りがあります。
そのとき、お釈迦さまをまつる小さな花御堂はルンビニの花園を表していて、甘茶は天から降ってきた雨を表しているそうです。
さて、カピラバスツの王さまはヒマラヤの奥へ使いを出して、有名な仙人を呼び寄せました。
「王子の未来を、占っておくれ」
仙人は、しばらく王子の顔をながめていましたが、やがてポタポタと涙をこぼしたので、みんなはびっくりです。
「このめでたい時に、なぜ、泣くのですか?」
「もしや王子さまに、何か悪い事でもあるのでしょうか?」
すると仙人は、あわてて手をふりました。
「と、とんでもない! わたしは長い間生きてきましたが、これほど偉大な方に出会うのは初めてです。もしこの王子が王さまになるならば、インド中を治める立派な王さまになるでしょう。また、お坊さまになるなら、尊い仏さまの教えをみんなに伝えてくださります。どちらにせよ、こんなにめでたい事はございません」
仙人はこういって、また涙を流しました。
「それでは、どうしてめでたいのに泣くのです?」
すると仙人は、さらに涙を流しながら答えました。
「わたしは、もう年寄りです。あまり長い間は生きられません。出来る事ならもっと長生きをして、この王子さまの教えを聞かせていただきたかったのです。でも、それが出来ないとは、くやしくてなりません。それで、泣いてしまったのです」
やがて王子さまは『さとり』を開いて、お釈迦さまとよばれるお方になられたのです。
おしまい
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