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第240話

悪魔の作った橋

悪魔の作った橋
スイスの昔話スイスの情報

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
十字架の折り紙じゅうじか

 スイスにはロイス川というきれいな川がありますが、この川には橋がありませんでした。
 それと言うのも、何度橋をかけてみても大水で壊されしまうのです。
「このままでは、川の両側に住む人たちが可愛そうだ」
 心優しい村長はみんなと力を合わせて、今までよりもっともっと大きくて丈夫な橋をかけました。
 けれどもまた大水が襲って、橋は流されてしまったのです。
 これを聞いた村長は、家の暖炉の前でくやし涙を流しました。
「どうしてだ! あんなに頑張ったのに。・・・これではもう、悪魔にでも頼むしかないな」
 すると突然、村長の目の前に大男が現れました。
 大男は黒い服に赤いズボン、そして羽の付いたボウシをかぶっています。
「おう、今、悪魔を呼んだか? おれさまはサタンだ。名前ぐらい聞いた事があるだろう」
 村長は、びっくりです。
 サタンと言えば、悪魔の王さまの様な存在です。。
「は、はい。確かにお呼びしました。ロイス川に、絶対に壊れない橋をかけていただきたいと」
「あははははっ、そのくらいお安い御用さ」
「本当ですか?」
「ああ、本当だ。でもその代わりに、最初に橋を渡ったたましいをもらうぞ。いいな?」
「た、たましい! あの、それは困ります。金貨では駄目ですか?」
「ふん! そんなくだらない物、悪魔なら簡単に作れるわ。ほら、見ていろ」
 サタンは暖炉で赤々燃えてる炭を手のひらで握りしめると、怖がる村長の手に乗せました。
「あつっ・・・くない。おおっ、これはすごい!」
 不思議な事に、炭はキラキラ光る金の塊に変わっていたのです。
 目を丸くしている村長に、サタンは言いました。
「それはお前にやろう。橋も今夜中に作ってやる。だから必ず、最初に橋を渡ったたましいを寄こせ。いいな、忘れるな」

 次の朝、村長がロイス川へ行くと、これまで見た事もない、それはそれは立派な橋がかかっていました。
 これなら、どんな大水がやって来ても平気です。
「どうだ! おれさまは、約束を果たしたぞ」
 橋の向こうにサタンが現れて、大声で叫びました。
「そっちも約束通り、たましいを寄こせよ」
「はいはい、ではさっそく。今から行きますよ」
 村長はそう言うと、用意してきた大きな袋の口を開けました。
 すると中から、尻尾に黒いリボンをむすんだ犬が飛び出して、
 ワン、ワン、ワン
と、吠えながら橋の上を駆け出しました。
「な、なんだ! おれさまが欲しいのは、人間のたましいだぞ。・・・くそっ、悪魔を馬鹿にしやがって。こんな橋は、壊してやる!」
 怒ったサタンは、大きな岩を振り上げました。
 するとちょうどそこへ、牧師さんがやって来ました。
 牧師さんは新しい橋にお祈りをする為に、大きな十字架をかかげていました。
「わあっ、来るな。おれさまは牧師と十字架が嫌いなんだ! やめろ! 助けてくれ!」
 サタンは大慌てで逃げ出し、それきり二度と戻って来ませんでした。

 さて、悪魔の作った橋はとても丈夫で、どんな大水が来てもびくともしませんでした。
 おかげで村人たちは、大喜びです。
 でも村長はサタンにもらった金の塊で、大やけどをしてしまいました。
 それは怒ったサタンが、金の塊を元の熱い炭に戻してしまったからです。

おしまい

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