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    福娘童話集 > 絵本紙芝居(アニメかみしばい) 節分の鬼 
         
          節分の鬼 
        アニメサイズ
        Max 2880×2160 字幕「日本語」「中国語」追加 youtubeの設定で変更可能 
        
        
         
         
        節分の鬼 
         
        イラスト版  えほん版 
      
       
      
       むかしむかし、ある山里に、一人暮らしのおじいさんがいました。 
         
       この山里では今年も豊作で、秋祭りでにぎわっていましたが、誰もおじいさんをさそってくれる者はおりません。 
       おじいさんは祭りの踊りの輪にも入らず、遠くから見ているだけでした。 
       
       おじいさんのおかみさんは病気で早くになくなって、一人息子も二年前に病気で死んでいました。 
       おじいさんは毎日、おかみさんと息子の小さなお墓に、お参りする事だけが楽しみでした。 
        「かかや、息子や、早くお迎えに来てけろや。極楽(ごくらく→天国)さ、連れてってけろや」 
         そう言って、いつまでもいつまでも、お墓の前で手を合わせているのでした。 
         
       やがてこの山里にも冬が来て、おじいさんの小さな家は、すっぽりと深い雪に埋もれてしまいました。 
       冬の間中、おじいさんはお墓参りにも出かけられず、じっと家の中に閉じこもっています。 
       正月が来ても、もちを買うお金もありません。 
         ただ冬が過ぎるのを、待っているだけでした。 
         
       ある晴れた日、さみしさに耐えられなくなって、おじいさんは雪に埋まりながら、おかみさんと息子に会いに出かけました。 
       お墓は、すっかり雪に埋まっています。 
       おじいさんは、そのお墓の雪を手で払いのけると。 
      「さぶかったべえ。おらのこさえた甘酒だ。これ飲んで温まってけろ」 
         おじいさんは甘酒を供えて、お墓の前で長い事、話しかけていました。 
         
       帰る頃には、もう日も暮れていました。 
       暗い夜道を歩くおじいさんの耳に、子どもたちの声が聞こえてきます。 
        「鬼は〜、外! 福は〜、内!」 
        「鬼は〜、外! 福は〜、内!」 
         おじいさんは足を止めて、辺りを見回しました。 
         どの家にも明かりがともって、楽しそうな声がします。 
        「ほう、今夜は節分(せつぶん)じゃったか」 
       おじいさんは、息子が元気だった頃の節分を思い出しました。 
       鬼の面をかぶったおじいさんに、息子が豆を投げつけます。 
         息子に投げつけられた豆の痛さも、今では楽しい思い出です。 
         
       おじいさんは家に帰ると、押し入れの中から古いつづらを出しました。 
      「おお、あったぞ」 
      「むかし、息子とまいた節分の豆じゃあ。ああそれに、これは息子がわしに作ってくれた鬼の面じゃ」 
       思い出の面をつけたじいさんは、ある事を思いつきました。 
      「おっかあも、可愛い息子も、もういねえ。ましてや、福の神なんざにゃ、とっくに見放されておる」 
         こう思ったおじいさんは、鬼の面をかぶって豆をまき始めました。 
      「鬼は〜内、福は〜外。鬼は〜内、福は〜外」 
      おじいさんは、わざとアベコベに叫んで豆をまきました。 
      「鬼は〜内、福は〜外」 
       もう、まく豆がなくなって、ヘタヘタと座り込んでしまいました。 
       その時、おじいさんの家に誰かがやって来ました。 
      「おばんでーす。おばんです」 
        「誰だ? おらの家に、何か用だか?」 
         おじいさんは、戸を開けてビックリ。 
      「わあーーっ!」 
       そこにいたのは、赤鬼と青鬼でした。 
        「いやー、どこさ行っても、『鬼は〜外、鬼は〜外』って、嫌われてばかりでのう。 
         それなのに、お前の家では、『鬼は〜内』って、呼んでくれたでな」 
         おじいさんは震えながら、やっとの事で言いました。 
      「す、すると、おめえさんたちは節分の鬼?」 
      「んだ、んだ。こんなうれしい事はねえ。まんずあたらしてけろ」 
        と、ズカズカと家に入り込んで来ました。 
        「ま、待ってろや。今、たきぎを持って来るだに」 
       この家に客が来たなんて、何年ぶりの事でしょう。 
       たとえ赤鬼と青鬼でも、おじいさんにはうれしい客人でした。 
       
       赤鬼と青鬼とおじいさんが、いろりにあたっていると、またまた人、いえ、鬼が訪ねて来ました。 
      「おばんでーす。おばんです」 
        「『鬼は〜内』ってよばった家は、ここだかの?」 
        「おーっ、ここだ、ここだ」 
        「さむさむ。まずは、あたらしてもらうべえ」 
       ぞろぞろ、ぞろぞろ、それからも大勢の鬼たちが入って来ました。 
       何と節分の豆に追われた鬼がみんな、おじいさんの家に集まって来たのです。 
        「何にもないけんど、うんと温まってけろや」 
        「うん、あったけえ、あったけえ」 
         おじいさんは、いろりにまきをドンドンくべました。 
         十分に温まった鬼たちは、おじいさんに言いました。 
        「何かお礼をしたいが、欲しい物はないか?」 
        「いやいや、何もいらねえだ。あんたらに喜んでもらえただけで、おら、うれしいだあ」 
        「それじゃあ、おらたちの気がすまねえ。どうか、望みをいうてくれ」 
      「そうかい。じゃあ、温かい甘酒でもあれば、みんなで飲めるがのう」 
      「おお、引き受けたぞ」 
      「待ってろや」 
       鬼たちは、あっという間に出て行ってしまいましたが、 
      「待たせたのう」 
       しばらくすると、甘酒やら、ごちそうやら、そのうえお金まで山ほどかかえて、鬼たちが帰って来ました。 
       たちまち、大宴会の始まりです。 
      「ほれ、じいさん。いっペえ飲んでくれや」 
         おじいさんも、すっかりご機嫌です。 
         こんな楽しい夜は、おかみさんや息子をなくして以来、始めてです。 
       鬼たちとおじいさんは、一緒になって大声で歌いました。 
       
      ♪やんれ、ほんれ、今夜はほんに節分か。 
        ♪はずれ者にも、福がある。 
        ♪やんれ、やんれさ。 
        ♪はずれ者にも、春が来る。 
         
         大宴会は盛り上がって、歌えや踊れやの大騒ぎ。 
         おじいさんも鬼の面をつけて、踊り出しました。 
         
        ♪やんれ、やれ、今夜は節分。 
        ♪鬼は〜内。 
        ♪こいつは春から、鬼は内〜っ。 
         
         鬼たちは、おじいさんのおかげで、楽しい節分を過ごす事が出来ました。 
       朝になると鬼たちは、また来年も来るからと上機嫌で帰って行きました。 
           
         おじいさんは鬼たちが置いていったお金で、おかみさんと息子のお墓を立派な物に直すと、手を合わせながら言いました。 
      「おら、もう少し長生きする事にしただ。 
         来年の節分にも、鬼たちを呼ばねばならねえでなあ。 
       鬼たちに、そう約束しただでなあ」 
       
       おじいさんはそう言うと、晴れ晴れした顔で家に帰って行きました。 
      おしまい 
         
          
         
        
        
       
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